第四章
第42話 お見合い
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ぞ? お前まだ若いんだからな? 命は大切だぞ? デフォルトの作戦は『いのちだいじに』だ。オーケー?」
また彼がこくりと頷く。
自分でも何を言っているのかさっぱりわからなかったが、必死なのは伝わったようだ。
彼の口はフリーになった。
***
「……」
「……」
ちゃぶ台を挟んで奥がタケル、手前が俺。
向こうは体育座りのような座り方、こちらは正座をしている。
会話はない。お互いに何となく顔も逸らしている。
「……」
「……」
――むむむ。何だこの空気は。気まずすぎる。
クロはマイペースに格子の手前でペタンと座っている。この状況を打開するための助けにはなってくれそうもない。俺一人で打開する必要がある。
いきなり「協力してくれ」と切り出すのは、さすがにまずいだろう。
モノには順序というものがある。ある程度打ち解けてからでないと、構えられてしまいそうだ。
まずは適当な話でも――。
「あのさ……」
「あの……」
げ、かぶった。
「ああ、先どうぞ」
「いえ、そちらが先でお願いします」
「こっちは大したことじゃないから」
「こちらも大したことではないのですが……」
「あー、でも、とりあえずそっちからいこう。うん」
「……はい」
まずい。早速かみ合わない。
「僕、自分から死ぬつもりはありませんので……。約束は守れると思います」
「そ、そうか。それはありがたい」
よかった。
というか、それは思いっきり大したことだと思うのだが。
「……」
「……」
「あの、今そちらが言いかけたことは……何だったんですか」
「ああ、ええと。この前に神社で会ったときも、こんな感じでテーブル挟んで向かい合わせだったなって思ってさ。これはちゃぶ台だから、そのときのものより小さいけどな。アハハハ」
「……そうですね」
ヤバい。俺のほうは本当に大したことではない。
「……」
「……」
また沈黙だ。
「ええと、タケル君と呼べばいいのかな?」
「タケルでいいです」
「じゃタケルと呼ぶぞ。俺はリクでいいからな」
「ではリクさんと呼びます」
こっちに対してはさん付け。別に付けてくれなくていいのだが……。
壁を作られているような気がしてしまうではないか。
「タケル、お茶は飲めるな?」
「はい」
また看守を呼んで、用意してあったお茶を持ってきてもらった。
匂いからすると、おそらくほうじ茶だ。
「……」
「……」
ズズズズという音だけが、牢に響く。
このお茶は来客用のものらしい。なので高級品なのだろうと思うのだが、この状況では味を感じない。
うーむ……
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