第四章
第42話 お見合い
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、部屋の隅に背中と後頭部をぶつけた。
「っ!」
「あ! 大丈夫か!?」
寝起きでいきなり俺の顔を見たので、混乱させてしまったようだ。
頭を抱えうずくまったタケルのもとに、駆け寄る。
「落ち着け。ここは牢屋だ」
「……」
彼はあらためてこちらを見上げ、そして周囲を見回した。
そして膝を抱えて体育座りのような姿勢となり、頭をがくりと垂らした。
自分が捕縛されたことを思い出したのだろう。
俺はふたたび片膝立ちで座り、目線の高さを彼に合わせて質問した。
「いま頭を打ったと思うけど。大丈夫か?」
その問いに対し、彼はこちらを見て、アー、アーと何かを言った。
「ん?」
猿ぐつわのままのなので、何を言っているのかよくわからなかった。
言っていることがこちらに通じないと判断した彼は、声を出すのをやめ、その代わりにこくりと頷いた。
大丈夫だ、ということだろう。
「そうか。手首やわき腹はどうだ? 大丈夫?」
少し右手首をブラブラさせ、左のわき腹をなぞり。またこくりと頷いてくる。
うーん……。
この猿ぐつわはかわいそうだ。外してあげたい。
舌を噛んで自殺という可能性を考えると怖いのだが、どのみち、水を飲んだり食事をしたりするときは外さなければならない。
「えーと。これから、その猿ぐつわを外そうかと思う。で、それに当たって俺のほうからお前に頼み……いや、約束してほしいことがあるんだ」
そのほうがよいと判断し、約束という表現に言い直した。
俺はさらに少しだけ接近し、目をできうる限りしっかり合わせた。
「ないと信じているけど、自殺は絶対に考えないでほしい」
「……」
「約束してもらえるならソレを外す。約束してくれ」
彼はこくりと頷いた。
「お、よし。俺の時代では『指切りげんまん』というものがある。それでいくぞ」
彼の顔を見ると、いかにも意味不明だという雰囲気だ。
俺はお構いなしに左手を伸ばし、タケルの右手を掴んだ。
こちらの左手の四指に、剣ダコで少しゴツゴツした手の感触が伝わってくる。
彼は、少しびっくりした様子でこちらを見上げてきた。だが、抵抗はされなかった。
彼の右手の小指に、こちらの右手小指を絡ませる。
「これで約束成立だな。男と男の約束だ。クロ、お前が証人だ。よく覚えておいてくれ」
「……わかった」
指切りの意味まではわかっていないと思うが、空気を読んでくれたのか、特に突っ込みはなかった。
俺は看守を呼び、猿ぐつわのベルトの鍵を受け取った。
「よし、では外すぞ。いいか? さっきの約束、忘れるなよ? 破って自殺なんかしたらぶっ殺しもんだからな? 絶対ダメだぞ? 末代まで恨む
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