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永遠の謎
251部分:第十八話 遠く過ぎ去った過去その一
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第十八話 遠く過ぎ去った過去その一

                 第十八話  遠く過ぎ去った過去
 王の旅の話はだ。ビスマルクも聞いた。
 彼の周囲はだ。顔を顰めさせて言うのだった。
「あの王にも困ったものです」
「全くです。公務を放棄してお忍びでの旅とは」
「しかもフランスに」
 こうだ。口々に言うのである。
「我等が次に戦うのはフランスです」
「そこに行かれるとは」
「一体何を考えておられるのか」
「何も考えておられないのか」
 王の資質をだ。明らかに疑っていた。
 そうしてだった。こんな言葉も出て来た。
「あれでは。バイエルンも気の毒です」
「困るのは臣民達です」
「彼等のことを考えずあの様な行動を取られるとは」
「何を考えておいでなのでしょう」
 これが彼等の言葉だった。しかしだ。
 ビスマルクはだ。落ち着いた様子でだ。こう言うのであった。
「あの旅はあの方にとっていいことだ」
「バイエルン王にとっては」
「いいことなのですか」
「そしてドイツにとってもだ」
 よいことだとだ。彼は言うのである。
「必ずよいものを手に入れられることだろう」
「必ずですか」
「今回の旅により」
「そうだ。しかしだ」
 だが、だった。ここでビスマルクの言葉が変わった。
 そのうえでだ。こう周りに言うのであった。
「それがわかるかどうかはだ」
「それは別問題というのですか」
「そうなのですか」
「そうだ。それが問題なのだ」
 ビスマルクはその深い洞察を窺わせる目で話した。
「あの方を理解することは難しい」
「確かに。それは」
「私は少し」
「私もです」
 周りもだ。ビスマスクのその言葉に難しい顔になる。そしてだ。
 彼等は己の考えをだ。そのまま言うのだった。
「あの方のお考えはわかりません」
「何を考えておられ何を御覧になられているのか」
「それがわからないのですが」
「あの方にあるのは知性や教養だけではない」
 その二つを兼ね備えた人物であるということはわかるというのだ。王がだ。
 そのことは誰もがわかることだった。しかしなのだった。
 王のその考えはというと。中々だったのだ。
「あの方は一体」
「何を見ておられるのか」
「それなのですが」
「あの方は美を見ておられるのだ」
 それだと話すビスマルクだった。
「それを御覧になられているのだ」
「美ですか」
「前もそういうことを聞きましたが」
「では王は美をこの世にですか」
「それを描き出そうとされているのですか」
「あの方は芸術家なのだ」
 ビスマルクはだ。王をそうだと理解していた。
 そしてだ。彼は王のその旅について話した。
「その芸術は必ずドイツの宝となる」
「これから生まれるドイツ
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