60話:闇への糸口
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述べてから、親書を手渡す。子爵はすぐに開封して読み始めたが、途中で手元の情報端末を起動し、同封されていたのであろうマイクロチップを差し込んでから、続きを読み始めた。かなりの大事のようだが、私が同室したままで良いのだろうか?親書の確認を終えたのだろう。子爵がこちらに視線を向けられた。
「ケスラー大尉、親書の内容に関して、リューデリッツ伯から何か聞いているかね?」
「はっ!この件で担当になるなら、子爵閣下からお話されるだろうとのみ承っております」
日頃、温和な雰囲気の子爵閣下が、何やらピリピリしたご様子だ。親書の中身はかなりの大事のようだ。
「この件に関与すれば、命の危険があるやもしれぬが......。ケスラー大尉以上の適任者はおらぬのも事実であろう。心して読んで欲しい」
子爵から受け取った親書の内容は、フェザーンを設立した地球出身の商人、レオポルド・ラープが、地球教教団の指示の下、フェザーンを設立した可能性が高く、自治領領主府も、地球教団の意向の下にある可能性が高い事。先年の異母弟殺害に関しても、戦況が優勢な帝国の内部に不協和音を生じさせるための工作であった可能性が高い事。最終的な目的は不明だが、少なくとも帝国と叛乱軍を争わせて漁夫の利を得る事で何かしらの利益を得ようとしている事が記載されていた。
「閣下......。これは......。確かに幼心にフェザーン設立の資金はどこから出たのかなどと考えた事はございましたが、まさか旧世紀の遺産が使われていたとは......」
「若しくは叛乱軍の領域でつくった物やもしれぬな。フェザーン回廊が非武装地域となれば、帝国にもメリットはあるが、フェザーンが設立されたのはコルネリアス陛下の大親征の後、しばらくしてからのはずじゃ。国防をイゼルローン回廊に集中できたことで、叛乱軍は軍備を立て直す時間が稼げた。やけにタイミング良く宮廷クーデターが起きたが、それにも関わっておるやもしれぬの。ベーネミュンデ候爵夫人のご懐妊に関しても、胎児が女児という噂を流したから無事に生まれたが、もし男子であれば前回同様、死産であったやもしれぬな......」
予想外の仮説に、私は思わず唾を飲み込み、にじんでいた変な汗をハンカチで拭った。
「どちらにしても闇雲に手を出す訳にはいかぬ。一撃で一網打尽にせねば、後々に禍根を残すことになろう。表立っても動けぬ。陛下へもお伝えするゆえ、ケスラー大尉はグリンメルスハウゼン子爵家のこの件の担当者として動いてくれ。リューデリッツ伯はフェザーンでの対応でこちらには手が回らぬだろうから、メッセンジャー役として卿の役割は重要なものとなろう。苦労を掛けるが頼むぞ!」
普段の温和な雰囲気から、これぞ帝国貴族の当主と言わんばかりの凄味のある雰囲気にのまれかけたが、御恩のあ
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