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稀代の投資家、帝国貴族の3男坊に転生
60話:闇への糸口
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早く視線は私に向けたままポケットにしまった。

「来期から自治領主となりますのでそうなればもう少しお役に立てるとも思うのですが......」

「いえいえ、これだけで十分です。あとは我が家の問題でもありますから、こちらで対処したいと存じます」

つまり危険を冒してまで動くなという事か。正直フェザーン自治領主府の人間は怖くて使えない。助かるといえば助かる話だが......。

「では、ご面倒をおかけした話は、ここまでにして折角ご足労頂いたのですから、御恥かしいですが我が家の御用船でも観て頂きましょうか」

そう言うと、案内をするように先導を始めた。何とかなりそうでホッとした自分がいる。あとは御用船を見学しただけだと自分に思い込まさなければ、思考で意思疎通するあの通信機器をごまかすことは難しいだろう。出来なければ死ぬことになるし、彼にも当然、奴らの魔の手が忍び寄ることになる。失敗は許されないと心せねば。


宇宙歴783年 帝国歴474年 10月上旬
首都星オーディン グリンメルスハウゼン邸
ウルリッヒ・ケスラー

「おおう、戻ったかケスラー大尉、儂では帝都の憲兵隊本部ならともかく、軍のお役目まではあまり口出し出来ぬゆえ、リューデリッツ伯の下に行かせたが、良き経験が出来ているようじゃな」

まだ幼年時代に、グリンメルスハウゼン領の初等教育学校で優秀な成績を上げた私は、領主のグリンメルスハウゼン子爵に見いだされ、学費を子爵家が負担する形で、士官学校へ入学し現在に至る。卒業後は憲兵隊勤務の傍ら、閣下が裏でされている陛下の密命を果たすお手伝いをしてきたが、2年前からリューデリッツ伯の指揮下で、前線総司令部の治安維持組織の立ち上げに関わることになった。士官学校時代に、会食に招待して頂いた関係だし、士官学校の関係者にとっては生きた伝説の様な方だ。『少しでも学び取って参れ!』という子爵のご配慮だと思い、リューデリッツ伯に直接意見具申できる立場を好機ととらえて、職務に精励してきた。
昇進に浮かれることなく、ケーフェンヒラー軍医大佐の相談にものっていたが、前線が落ち着いたのを見計らってフェザーンに行かれたリューデリッツ伯が前線総司令部に戻られるや否や、『子爵が風邪をこじらせて肺炎の予兆もあるようだから、名代として見舞って欲しい』と親書を渡され、オーディンの子爵邸へ、取るものも取り合えず駆けつけた訳だが、いたって元気そうだ。もっともこう言う事は陛下の密命に関わる際にはよくあることなので、戸惑ってはいない。

「はっ!ご配慮、感謝しております。リューデリッツ伯から親書を預かって参りました。お急ぎでお知らせしたかったご様子で、『子爵が風邪をこじらせたので名代として見舞う』という口実で、派遣されました。こちらが親書になります」

前口上を
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