60話:闇への糸口
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官に面倒を見てもらっているのだ。リューデリッツ伯爵家の家付きである以上、詳しい話を知っていたとなると、君たちの為にならないからね。出口付近に控えていてくれるかな?」
護衛担当達にそう言うと、我が共犯者はこちらを振り返った。護衛担当達に見えないように左目でウインクしてくる。つまり、面倒を見ている隠し子の話をする態で話をしろという事だろう。彼がフェザーンに駐在した一年で、歓楽街でかなりの浮名を流したのはフェザーンでも有名な話だ。中年男性からウインクされて喜ぶ未来が自分にあるとは思わなかったが、ラウンジの一角に座り話を始める。念のためテーブルの裏は確認した。共犯者も一緒に確認してくれた。危ない話だと理解してくれているのが分かり、改めて安心できた。
「閣下、お時間を頂き恐縮です。お預かりしているご子息に関して、いささか困った事態となりました。片親でお寂しかったのか、とある宗教にどっぷりという状況でして、お渡ししている生活費も、その教団にほとんど寄進してしまう状況です。どうしたものかと判断に困る状況でして、ご相談に上がった次第です」
「そうでしたか、それはご迷惑をお掛けして申し訳ない。何を信じるかは人それぞれですが、大人になればゆりかごには戻れませんし、必要なくなったゆりかごが育ててやったのだから、不要になってからも大事にしろと言われても、困る話でしょうね」
さすが私の共犯者だ。地球教の事も何かしらつかんでいる様だ。そう言えば、陛下とも親しかったはず、奴らは帝国でも大それたことをしでかしているのだろうか?
「そういえば私が懇意にしている御家でも、ご嫡男が宗教に入れ込んで、周囲がお困りと言う話を耳にしました。本来なら宗教とはより良く生きるための物であるはず、皮肉な話に、いささか面喰っております」
そう言うと、手元にあったティーポットからお茶を2つのカップに入れ、お互いの中間くらいに置いた。私は右側のティーカップを手に取り、お茶を飲んだ。彼まで取り込まれていたら、逃れるすべはない。そして奴らは帝国の皇室まで入り込んでいる様だ。左側のティーカップを手に取り、彼もお茶を飲んだ。
「現段階で、ご子息を引き剥がそうとすれば取り巻きを含め、反応が気になる所です。しっかりとした対応をする準備をした上で、禍根が無いように調整できればと存じますが......」
「分かりました。では警備会社から屋敷の方に人員を配置します。名目は先年の後継ぎ争いの際に逃亡したものが、叛乱軍の領域に行かずにフェザーンに潜伏している可能性があるためとしましょう」
彼の言葉に了承するようにうなずくと、胸元のペンをわざとテーブルの下に落とし、拾うふりをしてテーブルの下をのぞき込むと、手元に握っていたマイクロチップを彼の膝先に放る。何事もなかったかのように、彼も素
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