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永遠の謎
250部分:第十七話 熱心に祈るあの男その十四

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第十七話 熱心に祈るあの男その十四

「伯爵だ。そしてそなたはだ」
「私はですか」
「そのお供だ。伯爵とお供ならばだ」
「それならば?」
「私がいいと言えばそれでいいのだ」
 それでだ。相席を許されるというのである。
「そこまで離れたものはない」
「王でないのなら」
「王とは。やはり因果なものなのだろう」
 少し寂しく笑ってだ。王について話した。
 話をしながらシャンパンが入っているそのグラスを手に取り己の口に近づける。そうして一口飲み喉を潤してからであった。
 王はあらためてだ。ホルニヒに話した。
「至高の座にあるな」
「まさに」
「そこにいれば全ての者が共にいることを許されない」
「誰であろうともですか」
「王の上にあるのは教皇様と」
 ローマ教皇である。カトリックでもある彼にとって教皇はまさに太陽である。そしてその太陽と比肩する存在についてもだ。王は話した。
「そして皇帝だけだ」
「皇帝ですか」
「オーストリア皇帝」
 まずはその皇帝だった。
「そしてドイツ皇帝だ」
「その御二人ですか」
 ドイツ皇帝はまだこの世に出てはいない。しかしだ。
 既に誕生するものとしてだ。王は今話すのだった。
「王の上に立つのは」
「そうだ。それだけに王は孤独だ」
 その孤独さを見ての言葉だった。
「相席もだ」
「許されないと」
「それが王なのだ」
 王はホルニヒに話していく。
「だが伯爵ならばだ」
「まだできますか」
「そうだ。だからいいのだ」
 微笑みに戻っての言葉だった。
「今はだ」
「では」
「さて、そろそろ食事が来る」
 王は話をそこに移した。
「その前に今はシャンパンを楽しもう」
「そうですね。それでは」
「美酒はいい」
 王はその美酒を実際に楽しみながら述べた。
「この世の憂いを忘れさせてくれる」
「憂いをですか」
「憂いは尽きることがない」
 王にとってはだ。まさにそうしたものだった。
「その憂いを忘れさせてくれるのだからだ」
「確かに。酒は」
「いいものだ。ワインもいいがシャンパンもいい」
 王はどちらも愛していた。もっと言えばドイツの酒もフランスの酒もだ。
 今はフランスの酒を飲んでだ。それで話すのだった。
「では。楽しもう」
「では」 
 こうしたやり取りのうえで、だった。彼等は今は共に酒を楽しんだ。王は今は憂いを忘れていた。それと共に己を運命の中に置こうともしていた。


第十七話   完


                   2011・4・7

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