第四話 十数年前の遺産
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『秘匿された真実と放課後ティータイム』
喫茶店『ソウスケ』
落ち着いた空間に、広々とした店内。
客層は買い物帰りの家族連れ、読書を楽しむご老人や世間話にうつつを抜かす中年まで。
ここ喫茶店 ソウスケは万人に楽しめるように母である千鳥 かなめがデザインした店だ。
ホント、そんな才能とセンスを持った母を持って息子である俺は感激の至りですよ…。
「いつ来てもいい店だなぁ。雰囲気とか流れてる曲とか、」
風志は鼻歌交じりで店内に入り、奥の席を目指して進む。
この喫茶店 ソウスケで使われているオブジェクトやお客様用の机や椅子は全て母がデザイナーし、その配置場所も母が立案したが、そこはデザイナーと揉めた後、意気投合し、互いに納得出来る店内作りで現代に至る訳だが…何でも出来る母と何でも出来る姉を持つと大抵の事は驚かないし許容できる心の余裕はこういった母さんの行動から作られたものなのだと実感すると嬉しいような悲しいような。
「おぉ、ぼっちゃん」
奥の席に向かう最中、ガタイのいい青年からの挨拶。
雅 弁慶。ソウスケ開店当時から働いている古株で、オーナーである母が休みの時は店全体を仕切る頼れる存在だ。
「弁慶さん。お疲れ様です」
「おう。お疲れさん。
風志も久しぶりだな」
「どもどもご無沙汰してますます」
風志も昔からこの店には出入りしているので弁慶とは顔見知りだ。少し、歳上に対しての口調が俺的には気に入らないが弁慶は風志の口調…雰囲気を気に入っているらしく咎める事はない。
「相変わらず元気そうで何よりだ。で、今日はどうしたんだ?」
「ちょーっと蒼太の奴と秘密の密談で来ちゃいました」
「秘密の密談?
はははっ。そりゃあ大変だ。奥の席が空いてるからそこを使うといい」
普通の人間なら何を言ってるんだ?と思われる風志の発言も弁慶はユニークな奴だと理解しているので弁慶は奥の席を指差し楽しそうに笑う。
「ありがとございます。有難く使わせて頂きます」
「アザース」
ピシッと風志は頭を下げる。
言動と行動が微妙に一致していないが感謝の気持ちは伝わってくる。
「いいって事よ。後でなんか適当に菓子と飲み物でも持ってくからゆっくりしていくといい」
「そんな…いいですよ。俺達は客として来たんだから料金を支払わないと」
「いいのいいの。そんな固くなるなって。
ガキは大人の好意に素直に甘えんのが利口だぜ」
そう言い残し弁慶は奥の厨房に向かった。
「ホントにいい人だよなぁ、弁慶さん」
「本当にそうだよな。お前は弁慶さんの爪の垢を煎じて飲むといい」
「そうかも…後でちよっと貰おうかな」
冗談で言ったつもりだが風志は真剣になって悩んでいる。この感じだと後で本当に弁慶の爪垢を下さいと懇願しそうなのでそう
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