59話:再訪
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形にしました。閣下のお名前もあちら側で売れておりますので、変に代理人をたてると逆に面倒ごとが起こりそうですから」
「承知しています。その辺りはコーネフさんがやりやすいように進めてください。ビジネスに国境はありませんが、ほかの業界の方々からすると、疑念の種になるかもしれませんし。それにしてもウェンリー君でしたか?まさか士官学校に入学するとは驚きました。そういう時に困らない様にシルバーカトラリーをお贈りしたのですが......」
「その件ですが、閣下がお贈りされた万歴赤絵の大皿とシルバーカトラリーだけは、売りたくないと話しておりました。当初はヤンさんが収集されていた古美術品を処分して、学費に当てると聞いていたのですが......」
そこでコーネフさんは一旦言葉を区切った。
「鑑定したところ、閣下から贈られたもの以外は贋作だったらしく、事情を聴いた時には、無料で歴史が学べるという事で士官学校の戦史研究科に入学した後でした。こちらの手配りが足らず申し訳ございません」
「コーネフさんから謝罪を受けるいわれはないですよ。ただ、自由の国でも何かしらしがらみがあるのかもしれませんね。私も生まれに縛られていますし、この所、子供たちの進路に悩んでもおりました。彼の活躍を祈念できる立場ではありませんが、健康を祈念することにしますよ」
コーネフさんはかなり恐縮した様子だが、ヤンさんもあちらでは富裕層に属する方だった。まさかこんなことになるとは、想定はできないだろう。
「とはいえ、ヤンさんがこのビジネスの立ち上げ期に貢献してくれたのは事実ですから、私の持ち分の3%をそのウェンリー君に贈与しますので、コーネフさんへの委任状をもらうようにして頂けますか?このビジネスはあくまでコーネフさんが主体ですし、発言権が半々になると関係性も変わるでしょう?うまくいっているモノをいじくるのはあまり気が進まないので。毎年、委任状をもらいがてら近況を見てくれればこちらも気が楽になりますし......」
「お気遣いありがとうございます。息子のボリスとも仲が良かったようなので、休暇の際に訪ねさせる様にいたします。閣下の代理人でもございますので、帰国される際に見送りに同席させますので、ご挨拶させて頂ければ幸いです」
コーネフさんは少しホッとした様子だ。ご子息のボリス君は今年14歳。近所で悪たれと呼ばれていた少年がいつの間にやら成長している。彼は父親の家業を継いで独立商人になるのだろうか?少ししんみりした雰囲気のまま、久しぶりのドラクールでの時間は過ぎて行った。
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