59話:再訪
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ば動けない組織なんてそれこそ使い物にならないじゃないか」
閣下は少しいたずらをするような表情をしている。確かにベッカー少将もファーレンハイト少将も、ずっと閣下のサポート役をして昇進してきた。そろそろ自分の責任で仕事をする段階なのだろうが、戦死者は少ないとはいえ、閣下の役割を折半したとしても書類の山のひとつは処理することになるだろう。おそらくお二人ともかなりご多忙なはずだ。
「そういえば、フリーダが、いつの間にやら料理に目覚めた様だよ。来年、オーディンに戻るまでには鳥の丸焼きを旨く焼けるように練習しているから楽しみにしていてくれとのことだ。ご縁があって通い始めたヴェストパーレ男爵夫人の音楽学校で出るランチが、どうも舌に合わなかったのがきっかけらしい。おまけにフリーダが放り出した音楽の教科書を見たフレデリックが、逆に音楽に目覚めたらしい。グランドピアノを強請られたからね。オーディンに戻れば、鶏料理を食べながら音楽鑑賞することになりそうだよ」
「それは今から楽しみです。しかしながらフリーダ様はともかく、フレデリック様が音楽の道を選ばれるようなことがあっては何かと問題では?」
「うーん。それも考えたんだが、一応教練はやらせるつもりだが、幼年学校ではなく、音楽学校に行く事を志望するなら、認めても良いと思っているよ。アルブレヒトも幼年学校に進んだことでかなり思い悩む事になったし、オーベルシュタイン卿たちのような軍人としての才能はフレデリックにもあまり感じないからね。生まれた家から自由になるのは貴族社会では不可能だが、せめて生き方ぐらいは自由にさせようかと思っている。嫌味位は言われそうだが、家業だからと適性の乏しい職業を選ぶのは、正直、人生の無駄だと思うからね」
「将来RC社で担える役割を増やすために軍を選んだ私が、とやかく言う話ではございませんでした。ご容赦ください」
「気にしなくて大丈夫だよ。私たちは嫌々ながら軍人をしている割には、功績を立てている、それはそれで大したものだろうね」
またいたずらをするような表情をされると視線を手元の書類に戻した。私は一礼をして、執務室から退出する。この屋敷はRC社所有なので、作法も軍の流儀ではなく、貴族の流儀になる。自分の執務室に向かいながら、閣下ご自身の皮肉な経歴が頭をよぎった。閣下の実績を考えれば、元帥として軍を指揮することも出来るだろうが、しがらみがなければ、国務尚書・財務尚書あたりを担うべき方だ。
ただ、今の帝国では軍部系貴族に生まれた閣下が、政府閣僚になるとしたら軍務尚書しか候補にはならない。ご自分が生まれに縛られた職業に就かざるを得なかったからこそ、ご子息方にはせめて職業位は自由に選ばせたいとお考えなのだろうか。
宇宙歴783年 帝国歴474年 8月下旬
フェザーン自
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