246部分:第十七話 熱心に祈るあの男その十
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第十七話 熱心に祈るあの男その十
「フランス、いや卿のだ」
「私のですね」
「卿の世界を表したい」
こう騎士に話した。
「私はそれをしたいのだ」
「おそらくそれがです」
「それが?」
「陛下の運命なのです」
騎士もだ。こう王に言うのである。
「誰もがこの世に生まれたならば」
「運命を持っているのだな」
「はい、陛下の運命はです」
その運命についてだ。騎士はまた話した。
「この世に。私の、いえ白銀の世界を表すことなのです」
「この世に。夢を描くことか」
「それを実現されることがです」
「ワーグナーの美はその夢だ」
王は自然に彼の名前を出したのだった。ここでも彼のことは頭から離れない。まさにその芸術は王にとって全てになっていた。
「この世の至高の芸術だ」
「その至高の芸術はもう一つありますね」
「私は今それがある場所にいる」
そここそが、なのだった。
「この国にだ」
「フランス、バロックやロココの」
「それをより洗練し素晴らしいものを描きたい」
こう熱く語るのである。
「白銀の世界と合わせ。そのうえで」
「それを描く場所は」
「青と緑の場所だ」
どの色も王の愛する色だ。王は緑も愛しているのだ。
「そこにその至高の芸術を描こう」
「では。その為に」
「そうだ、私はこの国に来たのだ」
そのこともだ。王はわかったのだった。
何故フランスに来たのかをだ。理解したのである。
「私がこの国に来たのもまた運命だったのだ」
「その通りです。陛下は導かれたのです」
騎士も話す。
「陛下、それでは」
「フランスから戻れば」
「美を築かれて下さい
騎士はこう王に話した。
「どうか。御自身の運命を果されて下さい」
「思えばそれは決まっていたのだ」
王は騎士を見てだ。語った。
「私が卿と出会った時にな」
「私と出会うこともまた」
「全ては。運命の導くままにか」
「はい、そうです」
「そうだな。それではだ」
「進まれて下さい」
彼は言った。
「そうして下さい」
「そして卿とも」
騎士にまた話してであった。
「共にだな」
「私は常に陛下と共にいます」
騎士は微笑んで王に話した。
「それでは」
「進むとしよう」
王もまた微笑んで騎士の言葉に応えた。そうしてであった。
騎士は王の前から姿を消した。まるで霧の中に覆われるかの様に。王が一人になるとだ。すぐにホルニヒが彼の下に戻ってきた。
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