第一章 初体験
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七九七年 四月十六日
今日から新しい日記帳に変わった。
日記というものをつけ出したのが、
昨年の十二月一日。
イゼルローン要塞への引っ越しが契機でつけ始めたんだ。
最初はいつまで続くのだろうなんて思っていたのだけど、気がつけばもう五ヶ月も続けていた。
日記帳も二冊目に入った。
一冊目の日記帳はヤン提督が買ってきてくれたものだけど、この二冊目の日記帳は自分で買ったものだ。
さすがにお忙しい提督にまた買ってきてくれ、と頼むわけにもいかないしね。
提督がお忙しいっていうのは皮肉ではなく、本当の話だ。(ここはさすがに失礼かな。でも何時もは本当に暇そうにしてらっしゃるんだけど)
現在イゼルローン駐留艦隊、通称ヤン艦隊は出撃を控えている。
出撃予定は四日後の四月二十日。
しかも相手は帝国軍じゃない。
仲間であるはずの同盟軍なんだ。
ネプティス、カッファー、パルメレンド、そしてシャンプール。
四つの惑星で起こった反乱。
更には首都星ハイネセンで起きた軍事クーデター。
その全てを相手にしなくてはいけないんだ。
ヤン提督のご苦労は僕なんかには想像もつかない。
いや、ヤン提督だけじゃない。
お父さんを相手にしなきゃいけないフレデリカさんだってそうだ。
ヤン艦隊の誰一人だって、好き好んで同じ国民である同盟軍同士で殺し合いをしたいなんて思わないだろう。
まだ僕は正式な軍人になったわけじゃない。
ヤン提督が僕を軍人になって欲しくない事も分かってる。
軍人になったら上からの命令には従わなくてはいけない。
例え同胞に対して銃を向けろという命令であったとしても。
ヤン提督がそうされているように。
ヤン艦隊の皆が従っているように。
いや、敵である(こういう呼び方は残念だけど仕方ない)クーデター側の軍人達だってそうなんじゃないか。
勿論覚悟と信念(提督の嫌いな言葉だ)を持ってクーデターに参加したんだろうけど、中には上官の命令に従っただけという人も居るんじゃないのか。
非常に不謹慎な想像だけど、もしもヤン提督が上からの命令を撥ね付け、独立するなどと言ったらヤン艦隊のみんなは大半が従うんじゃないだろうか。
シェーンコップ准将なんて、むしろそうなるように煽っていたし。
提督がそんな事をなさるはずは無いし、全くの無意味な想像だけどね。
僕は今後どうするべきだろう。
本音を言えばやっぱり軍人になりたい。
ヤン提督のお側にいたいんだ。
僕に提督の小脳が務まるかどうかなんて分からない。
でも小脳じゃなくてもなんだっていい。
僕もヤン提督の、ヤン艦隊の力になりたいんだ。
今同盟は大変な危機を迎えている。
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