第一章 初体験
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けれど、あくまで提督のご都合に合わせてだ。
教科書だって無いし、ノートを取る事も許されない。(大事なことはメモなんてしなくても覚えられる。忘れてしまったとしたらそれは大した内容ではないから。以前提督から頂いた言葉だ。しかし、こうして日記に書く事は許されるのだろうか?まあ、そんなに事細かく書くつもりはないのだけれど)
授業とか講義といった雰囲気ではないのだけれど、それでもとても貴重な時間である事に代わりはない。
何と言っても話してくださる相手は"あの"ミラクル・ヤンなのだ。(こういう言い方は絶対に提督には聞かせられないな。しかし我ながら括弧の多い日記だ)
自由惑星同盟軍最高の智将に戦略・戦術を教われるのだ。軍人を目指す半人前には過ぎたる幸運というべきだろう。
(そう言えば、と言いつつまた括弧を使ってるなあ。戦略と戦術、さらに政略まで加えてその違いを優しく教えてくださったのも勿論ヤン提督だ。提督によればこの違いを弁えてる軍人は意外と少ないとか。確かあの時は戦闘屋と戦争屋の話から政治屋の話にまで拡がって渋い顔をされてたっけ)
今回はヤン提督のお話だけではなく、実際の戦闘指揮まで間近で見せていただく事が出来るんだ。
今の自分じゃ何も出来ない事は分かっているけど、それでも何か学んで身に着けて帰らなくては。
そうしなければ胸を張って正式に軍人になりたいんですなんて言えやしない。
況してや、ヤン提督の元で参謀を務める事なんて。
いつか来る遠い未来に向けて先ずは出来る事からやっていこう!
ヤン提督や艦隊のみんなの下で。
七九七年 四月二十三日
昨日の日記に書けなかったので今日の分に書いておこう。
ヤン提督はシャンプール星域の敵がゲリラ戦術を用いて後方攪乱してくる危険性を考慮されてシャンプールへ向かう事を決定された。
ただ僕はその心配はとりこし苦労ではないかと意見を述べたのだ。
「敵の司令官はヤン・ウェンリーではありませんよ」と。
僕の不躾とも言える意見に提督は笑みを浮かべてこう答えてくださった。
「未来のヤン・ウェンリーがいるかもしれないさ」と。
話はその後自分は別に有名に成りたかったわけでもないし、早く退役して年金生活に入りたいものだという謂わばいつもの話の流れになっていったのだが、僕は妙にその言葉が気になった。
『未来のヤン・ウェンリー』
それはつまり未来の英雄と同義語だと考えていいだろう。
今はまだ無名だが実は大変な才能を秘めている軍人。
機会さえ掴めれば一挙に世に羽ばたいていく、
まあそういう人の事を指すのだろう。
才能、軍事的才能、か。
これも以前ヤン提督から伺ったのだが、才能の中でも軍事的才能というものは中々発見されにくいもの
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