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稀代の投資家、帝国貴族の3男坊に転生
58話:それぞれの決断
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んでいたことは知っていたが、嫌々とは言え俺は軍人として前線でも戦果を残している。当初は、『リューデリッツ伯爵家が代々部門の家柄とは言え、軍人になる将来が確定しているわけではない』と伝えるつもりだったが、爺様と父上の事を思い出して、俺から伝える事は控えた。マリーンドルフ伯とも話す場を設けたし、妻のゾフィーとも事前に話し合い、仮にアルブレヒトが軍人以外の道を選ぶと判断したら、それを尊重しようと決めていた。

「忙しいのは確かだが、アルブレヒトに割く時間ならいくらでも調整するさ」

「ええ。むしろいつも忙しくしていて、貴方もいろいろと耐えてくれていると思っています。親子なのですから、変な遠慮をする必要はありませんよ」

ゾフィーもおそらく進路の話だと察しているのだろう。ゾフィーはある意味、育った環境に進路を縛られることは無かった。そう言う意味で、生まれに苦しんでいる嫡男に罪悪感を感じている面があるようだ。ただ、貴族の家では生まれに縛られる方が普通だ。気にしても仕方がない事だと思うのだが......。

「今回、お時間を頂戴したのは、私の進路の件です。リューデリッツ伯爵家は武門の家柄。大爺様もイゼルローン要塞の建設に関わられましたし、父上は前線でも後方でも功績を上げられました。私もそれに続きたいと志を持っておりましたが......」

そこまで言うとアルブレヒトは涙を浮かべてうつ向いてしまった。思わずゾフィーが立ち上がって抱きしめようとするが、手で制した。

「嫡男が自分の決断を表明しようとしているのだ。最後まで言い切るのを邪魔してはならん。アルブレヒト、落ち着くまでいくらでも待とう。最後まで言い切りなさい」

俺がそう言うと、アルブレヒトはしばらくポロポロと涙を流していたが、ハンカチを取り出して涙を拭うと意を決したように話し出した。

「私も大爺様と父上に続きたいと志を持っておりましたが、残念ながら軍人としての才が乏しいようなのです。進路は士官学校ではなく、帝国大学の経営学科にしたいと存じます。お許しいただけるでしょうか?」

「よくぞ言い切った!私はお前を誇りに思うぞ!」

俺はアルブレヒトの頭を撫でながら回答し、ゾフィーは涙を浮かべながらアルブレヒトを抱きしめていた。武門の家柄の嫡男という事で色々と幼いなりに感じていたのだろう。なるべくそういう空気は出さないようにはしていたが......。変に俺から伝えない判断は正しかったようだ。

「アルブレヒト。実はな、私も士官学校へは行きたくなかったのだ。本当は帝大の経済か経営学部に進学したかった。100年以上、戦争状態が続いているから皆の眼は軍人に向きがちだが、本来は臣民により良き明日を。次の世代ではもっと豊かになっているという希望を持たせるのが統治者の、領地持ちの貴族の役目
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