動き
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いるのだ。
目立つであろう。
マリネフが言葉を探している間に、カイザーリンクがヴァルテンベルクへと近づいた。
彼らを囲む兵士の輪に少しの動揺が空気となって、漏れ出た。
要塞司令官と駐留艦隊司令官。
それが出会ったときは、非常に面倒くさいと実感しているからだ。
つまらぬことながら、どちらが先に声をかけるかということだ。
前回は三十分ほど睨み合った後に、それぞれの副官が互いに挨拶をしたと笑えない現実がある。
長くなると覚悟を決めた、兵士たちの前で。
「これはカイザーリンク大将。イゼルローン要塞へようこそいらっしゃいました」
ヴァルテンベルクが一歩を踏み出して、敬礼をする。
驚きがさざめきとなって、広がっていった。
駐留艦隊司令部の兵士たちも、明らかな動揺を見せている。
まさか自分の上官が真っ先に要塞司令官に挨拶をしたと。
だが、驚いたのは要塞司令部の人間も同じであった。
「ご丁寧な挨拶ありがとうございます。ヴァルテンベルク大将――この度は先任とはいえ、要塞司令部が、大変に失礼なことをいたしました。要塞司令部全将兵に変わり、お詫びいたします」
近づいたカイザーリンクが、深々と頭を下げたのだ。
要塞司令部の上官が、駐留艦隊司令官に謝罪をする姿を全将兵の前で見せた。
このことに対して、先の倍ほどの驚きが衝撃となって、広い宙港に広がっていく。
ヴァルテンベルクですらも、目を開いている。
だが、すぐに首を振った。
「既に済んだことです。責任者は既に処断されており――また、私たち駐留艦隊司令部にも責任の一端がないわけではありますまい。謝罪は不要です、カイザーリンク大将」
ヴァルテンベルクの言葉にも、カイザーリンクはすぐに顔をあげなかった。
しばらく頭を下げて、顔をあげる。
「このようなことが二度と起こらぬよういたしますゆえ」
「ああ。まことに……」
ヴァルテンベルクが同意をして、二人は力強く手を握り合った。
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