動き
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が、中佐が考えるよりも時間は少ないと思います――というよりも、敵の経済に対して攻撃をすることの方が楽ですからね。艦艇を戦争で破壊するよりも、経済的損失を与えて、軍の艦艇を作れなくする方が楽ですから」
「それを帝国がやっていると」
「いえ、やっているのはフェザーンでしょう」
「どちらも同じだ。だが」
と、アロンソは言葉を止めた。
「そんな話は誰も信じないだろう。君が甘いといった理由も理解できる」
苦い言葉だった。
「信じていただかなくても構いません。ですが、アースは何かを企んでいると考えておいた方が良いかと」
「了解した。調べてみよう。だが、君は先日アース社を残しておいた方がいいと言っていなかったかね」
「ええ。でも……」
アレスはどこか自嘲気味に笑った。
「娘さんを悲しませるわけにはいかないでしょう?」
聞かなければ良かったと思いながらも、アロンソはゆっくりと頷いた。
+ + +
真っ黒い自由惑星同盟軍の墓標。
激しく修理をする金属音の中で、艦隊がゆっくりと近づいていた。
先に失った駐留艦隊の追加とともに、新造の旗艦がゆっくりと第一港へと接岸される。
出迎えるのはイゼルローン要塞の警備に着く兵士たちだ。
艦艇を迎える港は広いとは言え、現在では仕事がある人間を除き、要塞司令部の人間が集まっている。
接岸された旗艦の眼下
新たな要塞司令官を迎える式典だ。
通常であれば、それだけであったが、今回は少し違った。
要塞司令部の人間とは別に、駐留艦隊司令部の人間が並んでいる。
その先頭にいるのは、イゼルローン要塞駐留艦隊司令官ヴァルテンベルク大将であった。
駐留艦隊司令官が要塞司令官を出迎えるのは異例のことであった。
本来ならば、式典を終えて、顔合わせの月に一度の合同会議まで出会うことはない。
係留された旗艦のハッチへと長い階段が伸ばされ、やがて開いた。
降りてきたのは、白髪の髪をオールバックにした貴族然とした男だ。
六十に近づきながらも真っ直ぐな姿勢で、堂々としながら階段を下る。
この退役寸前の老兵をどう扱ってよいか。
要塞司令部の人間は拍手をしながらも、決めかねているようだ。
ただ階段を降りる硬質な足跡だけを鳴らしながら、港へと降り立てば、近づく影がある。
要塞副司令官であるマリネフ中将だ。
「歓迎いたします、カイザーリンク大将閣下」
「ありがとう。このような老兵に重要な任務が務まるか不安であろうが、ぜひ私を助けてもらいたい」
「は。イゼルローン要塞は難攻不落。我々も力の限りお仕えいたします」
「それは心強い」
そう言葉をかけて、視線がヴァルテンベルクを捉えた。
前方で、駐留艦隊司令部の人間に囲まれて
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