動き
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はアース社に近しい人間だと思われます」
伝えた言葉に、アロンソは目を開いた。
「……」
沈黙を返して、アロンソは手にしたコーヒーのカップを見る。
静かに広がった沈黙は少し。
「確かにあの時の君は少しおかしかった。だが、あのわずかな時間だけで?」
「先の先輩に、出会った人間は忘れるなと教えられましたから。あの時いた人は、私が装備企画課にいた時に、酒場で軍をけしかけた人間で間違いはないかと。タイミング的にもアース社とつながりのある人物かと」
「けしかけた?」
「ええ。アース社と交渉しているときに、少し時間稼ぎをされそうになりましてね」
苦笑。
だが、すぐにアレスの強い視線にアロンソは気づいた。
「偶然だろう」
「……かもしれませんね」
コーヒーを一口にして、アレスは言葉を探す。
「人は本来見たいものを見るものです」
吐いた息とともに。
「そして、自由惑星同盟は――といいますか、この時代はそれがまかり通っている」
呟いた言葉は真剣だ。
そもそも原作でも情報部にいたとされるバクダッシュ中佐があっさりと正体を見破られることや、情報部部長が噛んでいたとはいえ、クーデターを事前に察知できない状況。さらにはフェザーンや地球教、憂国騎士団など自由惑星同盟の根幹を揺るがす組織に対して一切の対応ができていない。
敵は帝国だけという事しか見てこなかったせいか。
本来であれば、帝国と同程度に注意を払わなければいけないフェザーンに対して、弁務官は原作の様に活動しているようには見えない。
期待すらしていなかったが、実際に軍で情報部と関わることになって、確信した。
ざるだと。
アレスは前世で防諜技術など習ったことはないが、それでも企業として海外のライバル企業と対等に戦うために、様々な営業を行った。
そんなただの営業にすら劣るのが、自由惑星同盟の現状。
「自由惑星同盟は。いや、この時代の防諜能力は最悪と言っていいかと。敵を帝国だけに固執していませんか。金になるというのなら――いや、資金という意味だけならば、企業の方が必要経費として、何でもやりますよ。フェザーンは」
呟いた言葉に、アロンソは不愉快な気分を半分――しかし、苦さを半分持った。
長年情報部で勤務しているアロンソも理解している。
情報部で集める情報はほぼ帝国に対することがほとんどであるからだ。
むろん、フェザーン経由で入る帝国に関する情報も集めている。
だが、そこはあくまでも敵を銀河帝国に限定していてのことだったからだ。
向けられた事実に今までの経験から反論を言いたい気分もある。
だが、それを――過去の経験に固執していたアロンソを打ち崩したのは目の前の人物だ。
「突然すぎるな」
「ええ。です
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