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稀代の投資家、帝国貴族の3男坊に転生
57話:憂鬱
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てな。年代も同じころ合いであろうし......」

私の言葉に、次代のリューデリッツ伯は喜んでと返してきた。やはり善良で良識人なのだ。当代のリューデリッツ伯なら犠牲者は少ない方が良いと言って逃げただろう。別に当代のリューデリッツ伯がヴェストパーレ男爵夫人のサロンへの同席を断ったお返しでは無い。お悩み相談を受けたお返しとして、年ごろの令嬢という厄介な魔物の相手を押し付けるだけだ。
貴族同士の取引としては妥当だし、早めの社会勉強にも丁度よいだろう。そして淑女たちの扱いも、次期伯爵家当主としては覚え始める時期だ。私は純粋な少年をいけにえにする事に、心の中で言い訳を重ねながら、淑女たちが待つサロンへの案内に取り掛かった。


宇宙歴782年 帝国歴473年 8月下旬
首都星ハイネセン 統合作戦本部
シドニー・シトレ中将

「では辞令を交付します。シトレ中将、本日付けをもって士官学校校長とします。引き続き貴官の奮闘を期待します」

国防委員会で最近名が売れ始めた女性代議士から辞令を受け取る。彼女はガチガチの主戦論者だったはずだ。父も、夫も、そして息子も帝国との戦争で戦死していたはずだ。私が言うべきことではないが、彼女は分かっているのだろうか?自分が論陣を張り、旗を振れば振るほど、同じ境遇の未亡人が増えるという事を。

「はっ!未来の名将の卵たちを出来る限りサポートしたいと思います」

辞令を受け取り、代議士が使う応接室を退出する。ドアを閉めるとともに自然にため息が出た。個人的には士官学校の校長は嬉しい人事だ。ただ今の戦況を考えると必ずしも喜ばしい人事ではない。8月に辞令が下りるという不規則な状況がそれを物語っていた。
本来なら正式艦隊の司令官になるはずだったが、同盟軍が戦力化していた12個艦隊は、正直、損耗しきっている状況だった。いくつかの艦隊を統合し、6個艦隊の定数を確保したうえで、残りは順次、戦力化していく計画となった。そんな中で、前任の士官学校校長が心労で倒れた為、急遽、私にお鉢が回ってきたと言う訳だ。
帝国との戦争では、戦闘艦の消耗は同程度だが、戦死者数に関しては数十倍という危機的な状況は改善できていない。もともと軍人というのは戦死者の予備軍であることは否めないが、戦死させるために育成してる訳ではない。士官学校の校長や教官は、やりがいはあるが、教え子たちが大量に戦死するという観点で、心労がたまる役職になっている。
統合作戦司令本部の廊下を歩いていると、同期のロボスが声をかけてきた。彼は前線指揮官としては実績を上げているが、若干戦況を楽観視する所がある。それが原因で、敵の後方のメンテナンス部隊を強襲した際、手痛いしっぺ返しをうけた時から、昇進に少し差がついた。

「シトレ。私は引き続いて分艦隊司令ということになりそうだ。
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