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稀代の投資家、帝国貴族の3男坊に転生
57話:憂鬱
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き物とは思えんぞ。座学が優秀なだけでも十分ではないか。卿がどれだけ務めているか、親しい者ならわかっていることだ。私ももっと務めねばと卿から影響を受けている。周囲に良き刺激を与える。俺は貴族の事は分からぬが、本来重責を担う者に求められるのはそういう部分ではないのだろうか?卿は誇るに値する人物だ。だからこそ、諸先輩も卿の事を気にかけてくれるのだ。そうでなければ、もっと上辺だけの付き合いになるだろう。まずは食堂へ行こう。空腹だから考えが悪い方向へ進むのだ。さあ!」

ミッターマイヤー先輩は私の背中をたたくと、食堂の方へ歩みを進めだした。心遣いが身に染みる。確かに空腹では良い考えが浮かばないのも確かだ。私も先輩の後ろをついて行った。


宇宙歴782年 帝国歴473年 8月下旬
首都星オーディン マリーンドルフ邸
フランツ・フォン・マリーンドルフ

「マリーンドルフ伯爵、本日はお忙しい中お時間を頂きありがとうございます」

応接セットの私の向かいに座った、リューデリッツ卿が、幼いながらも作法を心得た挨拶をしてくれる。私も、作法にかなった挨拶を返した。彼の父親であるリューデリッツ伯から久しぶりに時節のやり取りではない手紙が届いたのは秋口に入った頃だった。彼の嫡男が進路で悩んでいる様だが、自分では何を言っても皮肉に聞こえてしまう様に思うため、私なりに幼年学校から士官学校以外の進路を取ったものの一例として話を聞かせてやって欲しいと打診されたのだ。
幼年学校ではあらゆる面で優秀だったリューデリッツ伯も子育てに悩むのかと思うと、同じ父親として、親近感が増した。リューデリッツ邸に出入りする子弟は、皆軍人としての才能がかなりあることも、甥にあたるルントシュテット伯爵家のご嫡男も軍人として優秀であることも手紙には書かれていたし、目の前の幼いお客様については、ひたむきに努力できる才能は持っているが、残念ながら前線指揮官として超一流になるのは難しいだろうという事も認められていた。
リューデリッツ伯自身も、本来の志は事業家にあった。その辺りも含めれば、代々軍人の家系だからと言って、嫡男が軍人にならなければならない理由は無いと考えているのだろうが、前線でも後方でも当代屈指の功績をあげている人間からそんなことを言われても確かに皮肉に聞こえるだろう。

「それで、何から話そうか?御父上からは進路を決めるにあたり悩んでいるから、伯爵家当主として、士官学校ではなく地方自治系の大学に進路を取った経験を聞かせて欲しいとの旨は聞いているのだが」

「はい。リューデリッツ伯爵家は代々軍人の家系ですし、父上はもちろん、大御爺様もイゼルローン要塞建設という歴史に残る大業を主幹されました。私もそれに続きたいとは思っているのですが、諸先輩も優秀な方が多く、軍人としての私が、果たし
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