第四章
第39話 再登場
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を最後まで聞いただろ? だから今度は、お前に俺の話を聞いてほしい」
「……いいでしょう。殺す前に少し話を聞く程度なら」
「そうか、ありがとう」
「いえ」
「……」
「……」
また変な間ができた。
神社で会ったときも思ったのだが、なぜ彼はいちいち丁寧に返事をするのだろう。
「じゃあ話すぞ」
俺は深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。
そして今にも飛びかかりそうな姿勢のクロに「ちょっとだけ待ってくれ」と伝え、話を始めた。
「さっき、ヤハラが俺のせいで死んだとは思っていないと言ったな? お前は『自分のせいで死んだ』と思っているんだろ?」
「なぜそんなことがあなたにわかるんですか」
「その反応はやっぱりそうなんだな? お前は顔や仕草に出すぎなんだよ。俺もそういうところがあるみたいなんだが、お前はたぶん俺以上だぞ?」
「……」
「処刑の原因になった『作戦の失敗』というのは、どれも実行役は主にお前だったよな?」
「はい」
「で、お前は失敗したが、その責任はお前では取れず、上司であるヤハラが取ったと」
「……そうですね」
「俺はもちろん、今のお前と全く同じ状況になったことはない。けど、気持ちは少しだけわかる。自分で責任が取れない、取りたくても取れないって、結構つらいんだよな」
レベルはまったく違うが、俺もアルバイトをしたときに同じように思った経験はある。
店に損害を与えてしまったとき、下っ端のアルバイトには責任を取ることが許されない。代わりに上司にあたる社員が責任を取ることになる。
自分で賠償して終わりにできるなら楽なのに――そう思ったことはある。
タケルのケースは、それを極端にしたような感じだ。
自分は死んで責任を取ることが許されず、代わりにヤハラが死ぬことになった。
これは相当きついはずだ。バイトの話の比などではない。
「何が言いたいんですか? 同情されたくはありませんが」
「そっちがされたくなくてもこっちがしてしまうんだよ。人間ってそういうもんだろ」
「……」
「お前、まだ子供だよな」
「十六歳です」
「十六歳か。この時代の平均寿命が何歳かは知らないけど、まだこれからの年齢だろ。ここでバカな命令に従って命を捨てることはない」
「バカな命令だなんて思っていません」
「いいや、バカな命令だ。お前も薄々わかっていると思うが、もう今の段階では国王を暗殺しても遺跡の発掘がずっと中止になることはない。国はしばらく混乱するだろうが、落ち着いたらすぐに発掘が再開されるだろう。
だから暗殺はもう無意味……いや、すでにそっちの『組織』がこの国の発展を押さえつけること自体が、すでに不可能な段階に来ていると思うんだ」
「……」
「もうお前が戦う意味はない
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