第四章
第39話 再登場
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出し終わらないので、首を回して周囲の景色を確認した。
全体的に暗く、ジメっとした印象がある。
城の建物が南向きなので、裏側は北風をまともに受ける。そのせいか、植えてある木も少し種類が違っていた。
芝生もここだと日照不足で育てられないのか、グラウンドカバーは特に何も植えていないようだ。露出した土には、ところどころコケが生えている。
景色を確認したあと、左斜め後ろにいるクロを見ると、いつもの顔で俺のほうを見上げていた。
……が、急に耳をピンと立て、左側に首を回した。
「クロ、どうした?」
「……その角から、誰かが近づいてくる」
「え? パーティの参加者じゃなくて?」
「わからない。だが少し様子が変だ。気を付けろ」
誰だ……?
クロが見つめる先、城の建物の角を、俺も凝視する。
「こんにちは」
「……!」
現れた男は、もうこれで三度目の遭遇になる。
以前に遺跡で俺を拳銃で撃ち、そして首都の神社で俺を拉致した、暗殺者タケルだった。
――なぜここにこいつが……。
門以外に入れる場所はないはずなのに。
クロが俺の一歩前に出た。そして少し唸り、低く構える。
俺も腰の剣を抜いた。
タケルの格好は、過去二回の登場時とは違う。
身体に密着したウエットスーツのようなものを着ている。腰には小さな袋を付けていた。右手には、短剣……。
「お前、もしかして水堀を泳いできたのか?」
「そうです」
ビショビショのようには見えない。今泳いできたというわけではなさそうだ。早めにこちらに入り、どこかに潜伏して会場を見張っていたのだろう。
今日は、門と会場の警備に人を割いている。それ以外の監視は少し疎かになっていてもおかしくはない。そこを突かれたか。
「一人か? ヤハラもどこかにいるのか?」
もし、会場のほうにもこいつの仲間が潜り込んでいた場合、国王ら参加者の身が危ない。
そう思って聞いたのだが、彼は表情を翳らせ、そして意外な答えを返してきた。
「今日は一人です。ヤハラは……処刑されました」
「処刑? どうしてだ?」
「失敗の責任を、取らされて……」
そう言うと、胸に手をやり、握る仕草を見せた。
ウエットスーツに皺が寄る。
「責任って……。ヤハラはお前の上司だったのか?」
「はい。上司です。教育係でもありましたが」
「そうか……それは残念だったな……」
「はい……」
「……」
「……」
――何だこの間は。
しかもトンチンカンな会話をしてしまった。
残念も何も、俺はそのヤハラに先日殺されかけている。
こいつが心底無念そうに言うので、つられてしまった。
「えっと……。お前は何をしに来たんだ? 俺の前にあ
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