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戦国異伝供書
第十四話 北陸へその五

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「あの様にな」
「踏まを持たれ」
「そしてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「あの様にされるとはな」
「殿にしましても」
「残念じゃ」
 こう言うのだった、信長にしても。
「まことにな、これではな」
「何かあれば」
「その時はじゃ」
 まさにというのだ。
「わしもな」
「公方様をですか」
「そうせねばならぬ、帝もじゃ」
「公方様とのことについては」
「よく思われておられぬしな」
 それにというのだ。
「民達もな」
「都でもですな」
「わしの方にいてくれている」
「ならば」
「若し公方様が挙兵されても」
 そして信長に向かおうともというのだ。
「必ずな」
「まず誰もついてきませんな」
「そうなるわ、しかしな」
「しかし?」
「いや、幕府はもう最初から兵はなくじゃ」
 森にこうも話すのだった。
「銭もなくな」
「そして人心もなく」
「兵を挙げてもほぼ誰も来ぬ筈じゃが」
「どうもですか」
「何か妙な気がするのじゃ」
 己を守る森に怪訝な顔で話した。
「わしの敵はよく妙な者が出て来るのう」
「あの津々木にですか」
「金ヶ崎から退く時に撃たれた時もじゃ」
 音羽の城戸、彼にというのだ。
「一向宗との戦でも妙であった」
「あの闇の色の旗の者達ですな」
「本願寺にはじゃ」
「ああした門徒達はおらぬとのこと」
「最初から妙に思っておった」
 その闇の色の旗の者達を見てだ。
「本願寺、一向一揆なら旗は灰色」
「それは絶対のことですな」
「悪人正機を表しておる」
 本願寺つまり一向宗の教えの中でも特に重要なものの一つだ、人特に民はどうしても罪を犯してしまうので罪を犯した悪人こそ救うべきという教えだ。
「悪人を犯す民は白くなくな」
「そして完全に黒でもない」
「だから灰色じゃ」
「まさに本願寺の色ですな」
「その為一向一揆は必ず灰色の旗じゃが」
「灰色の者達はいましても」
「積極的に戦うのはじゃな」
 信長はその目を鋭くさせて述べた。
「闇の旗の者達であったな」
「黒というよりかは」
 黒といえば上杉家の色だがだ。
「それはな」
「まさに闇」
「黒は純粋な色、しかし闇の色はな」
「禍々しく不気味な」
「得体の知れぬ色じゃ、その色の者達がじゃ」
「一向一揆ではやたら出てきましたな」
「何十万と出て来たが何者じゃ」
 信長は眉を顰めさせて言った。
「お主を近江で追い詰めたしのう」
「猿夜叉殿がおられなければ死んでいました」
「そうであったな」
「まさにそうしたところでした」
 織田家でも武勇を誇る森でもというのだ。
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