237部分:第十七話 熱心に祈るあの男その一
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
第十七話 熱心に祈るあの男その一
第十七話 熱心に祈るあの男
王は時間ができたと見てだ。すぐにだった。
傍の者達にだ。こう話したのだった。
「暫くこの国を離れる」
「旅にですか?」
「それに出られるのですか?」
「そうだ、そうさせてもらう」
まさにだ。その通りだと述べるのだった。
そしてだ。そのうえでだった。
すぐに旅支度を整えてだ。宮廷を去ろうとする。その時にだ。
ホルニヒにだ。声をかけることも忘れていなかった。
「わかっているな」
「はい、わかっています」
すぐに答えるホルニヒだった。当然彼もだった。
既に支度を整えている。そのうえで王に応えているのだ。
静かにだ。片膝をついて述べるのであった。
「御供致します」
「私は今から王ではなくなる」
「王でないとすると」
「そうだな。伯爵にでもなるか」
無論仮の姿である。それになるというのだ。
「少なくとも王ではなくなる」
「そのうえで、ですね」
「旅に出よう。そなたもホルニヒではなくなる」
王としてのだ。様々な憂いや悩みから逃れてだ。そうしてだった。
彼は旅に出るのだった。ホルニヒもだ。
彼はミュンヘンを後にした。それにより空席となった玉座を見てだ。
傍の者達はだ。溜息と共に言うのであった。
「陛下は。どうして」
「何故王としての責務をこうも度々放棄されるのか」
「王ならば」
彼等は王に対してだ。無限のものと絶対のものを求めて言うのだった。
「務めるべきことは全て果さないとならないのに」
「それなのに勝手に旅に出られるとは」
「こうしたことが続けば」
「よくないというのに」
こう話す彼等だった。しかしだ。
王が旅に出たことをだ。スイスで聞いたワーグナーは静かにこう言うのだった。
「いいことだ」
「陛下にとってですか」
「いいことだと仰るのですか」
「そうだ、いいことなのだ」
こうだ。スイスに来ていた彼の支持者に対して話すのだった。
彼はスイスでも豪奢な生活をしている。部屋は黄色や紫の装飾で飾られ見事なピアノが置かれている。そのピアノの席に座りだ。
そのうえでだ。こう自身の支持者に話すのである。
「ミュンヘンに常にいてはだ」
「よくはないと」
「だからですか」
「そうなのだ。陛下は常に背負っておられる」
何を背負っているのか。それも問題なのだった。
「その重荷に押し潰されては。あまりに気の毒だ」
「それから逃れる為に」
「だから旅に出られることはいいのですか」
「あの方にとって」
「王になられるのに相応しい方だ」
ワーグナーはそのことはわかっていた。実によくだ。
「しかしそれでもだ」
「何かあるのですか」
「陛
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ