HLはすげーよ、確かにすげー。でも無敵か最強かと言われればそれはまたちょっと違う話なんだよなー、という短編集
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顔で、青いコートを羽織った、ごく普通の人間だった。
『少なくとも肉体に限定していえば』、だが。
「フム、私も名前が売れてきたな。一目見ただけで名前を言い当てられるのは、悪人冥利に尽きるといった所かな?」
「ま、そのヒラヒラしたモルフォ蝶みてーな装飾は覚えやすいからな。悪人云々に関しちゃ知らねぇ。で、いい年して蝶の標本作るエーミール少年でもあるまいし、ファーブル博士でもない教授がその蝶に何の用だ?」
「そういう君は、コレが何だか知っているのかい?」
「まーな」
どこかうんざりしたように肩をすくめた男は、不貞腐れたような顔をする。
「今更紳士気取る訳でもねえが、そいつは俺に『勝った』。少なくとも俺はそう思ってる。ガラじゃないが矜持ってヤツだな。自分に課した一種の義務、みたいな?」
「では、私の想像通りの存在だな。これは第二次大崩落危機の際に再構成された結界、その術式から零れる残留思念だ。本来なら何の害もない、ただ存在するだけの美しい蝶――悪意ある者には別の存在に見える幻の蝶だ」
「はっ――そこに思い至る人間はそういねぇ。俺の知る限り、気付くのは極悪人だけだ」
「誉め言葉として受け取っておくヨ」
互いにそのことには気づいている。
この蝶はメアリ・マクベスの残留思念、いやもしかすれば彼女そのものとも言える存在だ。
メアリ・マクベス――この少女は第一次大崩落の最中に命を落とし、数奇な運命を辿った結果、自らの心臓がHLを支える結界と化した。そして第二次大崩落危機に際し、首謀者によって心臓を破壊されて霧散。存在そのものが肉眼に見えないレベルで消失した。
大崩落は無限に広がる大地の崩落、或いは異界の侵入。そして結界がなければその大災厄を抑え込むことは出来ない。ところが、とある二人の少年が皆無に等しかった勝ちの目を人類側に引き戻し、大崩落は未然に防がれた。
「再構成された結界は完璧に近い。外からの干渉など正規の術士でもないと無理だろう。こんな胡散臭いアラフィフでは殊更にね。ところがこの蝶は、結界の再構築後にも動き回って目に見えて存在する。周囲から何かを吸収するでもなくひとりでに。すなわちこの蝶は結界とバイパスが繋がっている。結界の機能はなく子機とも呼べるが、そこに一筋のラインがある。そう、結界に触れうるラインが」
「俺のネタのパクリじゃねえか。二番煎じはウケねーぞ?」
「だろうネ。私自身、自分以外の誰かが思いつくようなトリックは願い下げだ」
だから、モリアーティがやりに来たのは、第二次大崩落の危機につながる可能性の排除。
この空を揺蕩う蝶を、巨大なセキュリティシステムと繋がる小さな端末を、断つ。
「ふぅん。そりゃあ、俺の妨害が入ることも織り込み済みの計画なのか?」
「可能性としてはね
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