234部分:第十六話 新たな仕事へその十
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第十六話 新たな仕事へその十
「選帝侯であった」
「王でもありました」
「領邦国家の中で強い権限を持っていた」
神聖ローマ帝国の弱点がだ。そのままバイエルンの自主性となっていたのだ。これはドイツの国家全てに言えることであった。
「それがバイエルンの誇りだった」
「しかしその誇りが」
「失われようとしているのだ」
それが今なのだった。
「私はその誇りを守りたい」
「バイエルンの誇りを」
「それが王としての私の務めなのだ」
こうまで言うのであった。
「だからこそだ」
「では陛下」
ホルニヒがここでこう王に話した。
「プロイセンに対しては」
「暫くはつかず離れずでいく」
それがプロイセンへの政策だというのだ。
「それと共にオーストリアにもだ」
「これまで通りですか」
「そうしていく。これといって動く必要はない」
今のバイエルンの動きはだ。それでいいというのである。
「今はな」
「そうされますか」
「しかし時が来ればだ」
「その時は」
「決断するしかない」
止むを得ずだが。しかしだというのだ。
「その時はだ」
「プロイセンにつかれますか」
「選択肢は唯一だ」
王は言った。それだけだと。
「バイエルンは何処にあるか」
「ドイツです」
「だからだ。一つしかない」
バイエルンがドイツにあるからだと。そこに答えがあるというのだ。
「バイエルンはプロイセンにつく」
「フランスと戦うならば」
「それしかない。フランスにつくなぞ有り得ないのだ」
「中立もですね」
「それもない」
どちらもだ。ないというのだ。
「あくまでだ。プロイセンしかないのだ」
「先の戦争の様にはいきませんか」
「あの時はまだ気が楽だった」
王が憂いを見せただ。その戦争ですらというのだ。
「オーストリアにつきだ」
「そして兵を動かさないことで、ですね」
「それだけでよかった」
こう話すのだった。
「しかし次の戦争はだ」
「兵を動かさないとなりませんか」
「どうしてもな。そうせざるを得ない。そして」
「そして?」
「私自身も。おそらくは」
その王もだ。どうなるかというのだ。
「担ぎ出されるだろう」
「陛下もですか」
「バイエルンの王だからだ」
そのだ。バイエルンの王だからだというのだ。
「私は表舞台に出ることになるだろう」
「それはお嫌なのですか」
「利用されることは好まない」
だからだというのである。
「それはだ。好きにはなれない」
「利用するのはやはり」
「プロイセンだ。あの国しかない」
そのだ。プロイセンだというのだ。彼が今最も見ているその国だ。
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