231部分:第十六話 新たな仕事へその七
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第十六話 新たな仕事へその七
「その彼を。彼の世界を」
「この世に」
「現す。彼を愛するが故に」
愛を見ていた。やはり同じものとはしていなかった。
「そうする」
「それでなのですが」
「それで。何だ」
「旅に出られている間ですが」
「案ずることはない」
そのことについてはだ。懸念はないというのである。
「それはだ」
「戦争が終わったからですか」
「だからだ。今は私がいなくとも」
「そうですか。今はですね」
「旅に出ていい。むしろ」
「むしろ?」
「今行かずしてだ」
どうかというのである。今旅に出ずしてだ。
「今度は何時行けるかどうかわからない」
「また。何かありますか」
「ある、それもだ」
先を見てだ。そのうえでの言葉だった。
「フランスとだ」
「そのフランスとなのですね」
「確実にある。ドイツとフランスは」
「確かに。我々とフランスは長い間対立してきました」
それこそ神聖ローマ帝国の頃からだ。ドイツとフランスは長い間対立してきた。その象徴がハプスブルク家とヴァロア家の対立なのだ。
「それを考えればですね」
「フランスはドイツの隆盛を望んでいない」
「ドイツ自体のはですか」
「そうだ。ドイツ自体はだ」
ドイツとして見ればなのだ。バイエルンとしてではなくだ。
「分裂し多くの力を持たないことがいいのだ」
「只でさえイギリスがいるのにですね」
「敵は少ない方がいい」
政治の常識である。
「だからこそだ」
「左様ですか」
「そういうことだ。それはわかるな」
「はい」
謹厳な調子でだ。ホルニヒは答えた。
「私も。それは」
「フランスの立場になって考えることだ」
「そうすれば。ドイツの隆盛は決して見過ごせるものではない」
「それは既に見抜かれている」
誰にか。それもまた問題だった。
「あの方にだ」
「あの方?」
「ビスマルク卿だ」
まさにだ。彼だというのだ。
そのプロイセンの宰相、ひいてはドイツの宰相になろうというビスマルクがだ。そのことを既に見抜いているというのである。その彼がだ。
「あの方は見抜いておられる。だからこそ」
「フランスが何かをする前に」
「されるだろうな。問題はフランスはそれをわかっていない」
「ナポレオン三世はですか」
「すぐにプロイセンは見る」
そのフランスをというのである。
「フランスの動きをだ。それをだ」
「では。フランスの動きに付け入るものがあれば」
「そこを衝く」
間違いなくだ。そうするというのだ。
「フランスはそれに何時気付くかだが」
「若し最後まで気付かなければ」
「終わりだ。罠に陥りプロイセンに敗れる」
これがだ。王の見ている未来だった。
ドイツにとっては悪い未来では
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