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戦国異伝供書
第十三話 青と赤と黒とその八

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「そして三方ヶ原でな」
「あの地で」
「敗れる、しかしな」
「飛騨者達が」
「あ奴を助けてくれるわ」
 家康、彼の命をというのだ。
「だからな」
「よいですな」
「まだな、しかし竹千代がここで危機に陥ることは」
 信長にとってはだ。
「望ましくないが」
「しかしですね」
「最早賽は投げられた」
 信玄は家康が必ず乗る挑発を行った、このことは既にというのだ。
 それでだ、こう言うのだった。
「ならばな」
「それならばですな」
「うむ、その助かった竹千代を助けに行くぞ」
 こう言ってだった、信長は尾張から三河に兵を進ませたがここで三方ヶ原の戦の話を聞いたのだった。
「そうか、やはりな」
「はい、徳川殿はです」
「敗れたな」
「そうなりました」
 報を述べる者が信長に答えた。
「三方ヶ原で、です」
「まさにあの地でじゃな」
「散々に敗れ」
 そうしてというのだ。
「浜松の城にかろうじてです」
「戻ったな」
「まさに少しでもです」
「何かあったらか」
「危ういところだったとのことです」
「そうか、やはり飛騨者達を送っておいて正解じゃったな」
 確かにと言った信長だった。
「若し送っておらぬとな」
「徳川殿も」
「死んでおったわ」
 間違いなくだ、そうなっていたというのだ。
「あ奴はな」
「そうした状況でしたな」
「しかしじゃ」
 それでもと言う信長だった。
「お陰で助かったわ、竹千代は」
「はい、しかしです」
「武田はじゃな」
「徳川殿の軍勢を破ってです」
「それからじゃな」
「遠江から三河に進んでいます」
 報を届けた者は信長にこのことも話した。
「今は」
「そうしてじゃな」
「このまま我等とです」
「ぶつかるな」
「そうなることは避けられぬかと」
「わかっておる」 
 信長はその者にこう答えた。
「それではな」
「これより」
「うむ、それでじゃ」
 まさにというのだ。
「武田の軍勢と戦ってじゃ」
「そのうえで」
「勝てぬかも知れぬが」
「負けませぬな」
「何があろうとそれはない」
 決してというのだ。
「負けぬ備えは用意した、ではな」
「その備えで」
「武田を退ける、今は武田の軍勢をその領内に返す」
 押し返す、そうするというのだ。
「織田の領土には入れぬぞ」
「一兵たりとも」
「そして徳川の領土からもじゃ」
 家康を破り意気揚々と進んでいるその国々からもというのだ。
「追い出すぞ」
「そうしますな」
「このままでは竹千代もどうなるかわからぬ」
 自国の領土を好き放題に進まれてはだ、国人の中で武田につく者が出て来ることも考えられるというのだ。
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