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真ソードアート・オンライン もう一つの英雄譚
インテグラル・ファクター編
終わりの始まり
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おそらく、今回の水を用意したのはクラディールなのだろう。そして、全員が水に口をつけるのを待っていた。やはり、一件落着なんてことにはならなかった。それだけでなく、この状況は最悪のものだろう。迷宮区。麻痺。誰も助けに来ないし、解毒結晶がなければ解毒することもできない。

「どういう事だクラディール!」
「あんたは前から気に入らなかったんだよ、ゴドフリーさんよぉ。弱いくせにあーだこーだと一々指図しやがって!」
 
そう言って、クラディールがゴドフリーに剣を突き刺した。ゴドフリーのHPバーが急速に減る。楽しそうに笑うクラディールを見て、これが初犯ではないのだと確信を得た。そんなことはどうでもいい。確信を得たからなんだっていうのだ。今、人が殺されかけている。もうHPがわずかしか残っていないゴドフリーに、大剣をゆっくりと押し込んでいく。じわじわと、しかし確実にHPは減り。ゴドフリーが、砕け散った。

「あんたにはもっといろいろ言いたいことはあったんだがなぁ……」

嗤いながら言いつつ、ほかの団員の方へと向かう。

「お前には特にないが、生還者は1人の予定なんだ」

言いながら、大剣を何度も振り下ろし、団員のHPは消え、命も同時に消滅する。俺は、何もできなかった。目の前で命が奪われている状況で、声すら発することができず、ただ見ていることしかできなかった。よく知った仲ではない。思い入れがある人物達でもない。だが、命が失われる瞬間、俺は何もできずに、みているだけだったのだ。

「次はお前だぜ、黒の剣士さんよぉ」
「なんでお前みたいな奴が……」

《血盟騎士団》に入っているのか。そう続かせる前に、奴は笑みを深めていった。

「もちろん、あの女だよ」

あの女。
血盟騎士団でコイツが指している人物はおそらくただ一人。

「テメェ」

先ほどまでに感じていた言いようのない虚無感とは別の感情にキリトは支配される。
怒り。アスナを――大切な存在を狙われているという事実に、怒りが沸いたのだ。

「ヒヒッ!そうこえぇ顔すんなよ、まだ何もしちゃいねぇんだからよぉ、ヒャハハ!!」

いうと、クラディールは大剣を持ち直し、キリトの胸に狙いを定める。ヤバい、このままじゃキリトは殺される!そうだ!

「おい!クラディール!麻痺毒なんて、どこで手に入れやがった」

俺は気を此方に向かせるように話しかける。

「ああ、どうせ死ぬんだ、特別に教えてやるよ」

俺の問い掛けに、クラディールはインナーの袖をめくる。そこには、すでにないはずのエンブレムが存在した。

「笑う、棺桶……ラフコフのメンバーかっ」

《笑う棺桶》ラフィンコフィン。かつて存在した、SAO史上最悪な殺人ギルドのエンブレ
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