224部分:第十五話 労いの言葉をその十四
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第十五話 労いの言葉をその十四
「それは神聖ローマ帝国だ」
「かつて存在したあの」
「とはいってもあの国の様に存在が薄くはない」
神聖ローマ帝国は国として存在していた。だが中央の力が弱くだ。貴族達がそれぞれの国を持っているといった状況だったのだ。
しかしビスマルクの目指すドイツはだ。どうかというのである。
「国として実際に存在するドイツだ」
「神聖ローマ帝国と違い」
「そうだ、違う」
まさにだ。違うというのだ。
「中央集権国家だ」
「では他の国はどうなるのでしょうか」
タクシスはそのことを問わずにはいられなかった。
「バイエルンも」
「ドイツの中に収まる」
「そのプロイセンのドイツにですか」
「その中における。そうだな」
読んでいる目であった。青いその目に不思議な光が宿っている。
「君主、私達は存在している」
「諸侯はなのですね」
「そうだ、だが」
「だが?」
「その権限はない。飾りになる」
象徴、それだというのだ。
「イギリス王家の様なものになる。そして」
「さらにですね」
「諸侯、王達はだ」
「陛下は」
「ドイツ皇帝の下にいる存在になる」
王と皇帝は違うのだ。皇帝は王の上に立つ唯一の存在だ。これは中国、つまり東洋のそれと同じ部分である。差異はあってもだ。
「そうなるのだ」
「では陛下は」
「今は安堵している」
戦争が終わりだ。そうなっていることは認めた。
しかしだった。それでもだとも話すのだった。
「だが。将来のことにはだ」
「不安ですか」
「私は憂いに覆われている」
タクシスに対して話すのだった。
「王であることにだ」
「それから離れられることは」
「できない」
それはだ。無理だというのだ。
「私以外に、オットーにだ」
「弟君に」
「王が務まるのか」
それが問題だというのだ。王位継承権第一位の王弟がだ。
「それはどう思うか」
「それは」
「思うな。無理だ」
それはだ。できないというのだ。
「オットーは狂っている。狂った者は王にはなれない」
「だからですか」
「私もそうかも知れないが」
王のその顔に自嘲が宿った。
「若しかするとな」
「それはありません」
タクシスは王の今の言葉を否定した。そして謹厳な声で述べるのだった。
「陛下は。何処までも」
「そう言ってくれるか」
「私は陛下の臣です」
これがタクシスの王への心だった。
「ですから」
「そうか。私を愛してくれているか」
「忠義を永遠に」
「わかった。それではだ」
その言葉を受けてだ。王はまた彼に告げた。その言葉は。
「婚姻のことだが」
「はい」
「許しなぞよい」
穏やかな声でだ。タクシスに告げたのである。
「それはだ
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