第四章
第36話 協力
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自分も動いていたからだと思うんです。だから協力を得られたのかなと」
「……自分も動いていたから協力を得られた? どういうことなのだろうか」
――うーん。わからないかなあ。
これだけとぼけられてしまうと――いや、恐らくとぼけているのではなく素なのだろうが――少し自分の感覚に自信がなくなってくる。
「ええと、例えばですよ。俺がずっと部屋に籠もっていて何もせずに、『なんかこの世界よくわからないのでよろしく』とか『カネは払うから後はやってね』とか、そんな態度でやっていたら、たぶん誰も協力してくれなかったと思うんです」
「そういうものなのか?」
「たぶんそういうものです」
まあ、もしかしたら、クロとかカイルあたりはそれでも協力してくれたのかもしれない。だがそれは例外中の例外だ。
他にも、放っておくと危なっかしいからとか、何をしでかすかわからないからとか、そんなことも助けてくれた理由の一つだったとは思うが。その辺も今はいいだろう。
俺は続けた。
「なので。あなたにいきなり『指示を出すからやれ』と言われても、なかなか気が進まないと言いますか。なんか、もうちょっと、気分が盛り上がる材料が欲しいなあと」
「それでわたしに出てこいと?」
「はい、そのほうがこちらも頑張ろうという気になります。神さまの仕様や内規は知らないですが、何かの方法で地上に降りることはできるんでしょう?」
「今までやったことはないが。できなくはないはずだ」
「じゃあお願いします。やっぱり、やりたいことがあるのであれば、その本人も出てくるべきかと思います」
「そうか……。そんなことは考えたこともなかったな」
お。
神は初めて姿勢を変化させた。顎に手をやって考えるポーズを作ったのだ。
そのまま少し考えていたが、手を外して再び直立不動の姿勢に戻ると、こちらに対して返事をした。
「わかった。お前と一緒に行くこと、そして『組織』解散という目標が達成されたら、この時代からの脱出を取り計らうこと。どちらも約束しよう」
「ありがとうございます」
神の表情は淡々としている。
特にここまでのこちらの態度に対し、怒っている様子もない。
「体が調達でき次第、城に行く。時間はかからないと思う」
「はい。お待ちしています」
神は俺に背を向け、歩き出した。
俺はその背中を見送った。
徐々に神の姿がぼやけ、空間の白に同化して消えていく。
そしてこの空間も、密度が薄れていくような気がした。
面会が終わり、俺の意識も神社に戻されるのだろう。
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