スキルド
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明ける。
森の奥から人影が近づいてきた。
私はそれに気づいて立ち上がる。
人影は1つきり。それは兄の姿だった。
兄は肩を落とし、真っ赤に泣きはらした目をしながら、俯いたままこちらにゆっくりと歩いてきた。
「兄さん!」
心細かった私は、駆けよってすぐに尋ねた。
「父さんと母さんは……?」
兄はすぐには答えず、しばらく沈黙していた。
涙を流しながら、やがてゆっくりと口を開く。
「……父さんと母さんは、死んだ」
その言葉の意味は理解できても、それはまるで現実感がなく、すぐに涙は出なかった。 兄は森の外に向かって歩き出す。
「兄さん、どこにいくの? 家には……」
「あの家にはもう戻れない」
兄は俯いたまま、はっきりとそう告げた。
じゃあ、どこに行くの? と私が尋ねると、
「まだ魔王の追手が俺達を探しているかもしれない。それに家はもうない。全部焼けてしまった」
まだ事実を受け止められないでいる私に、兄は残酷な現実を突きつけた。
私はそれを確かめようと、家の方に向かって駆け出した。たが、兄はすぐに私の手を捕まえて引っ張った。
「戻っちゃダメだ、チェント! まだ母さんたちを殺した奴らが森の中にいるかもしれないんだ!」
「嫌だよぉ……お家に帰りたいよぉ……」
私は愚図って手を振り回したが、兄はしっかりと腕を掴み、振りほどかせなかった。
「チェント、もう母さんたちはいないんだよ……」
涙声でその事実を噛み締めるように、兄は言った。
遂に私もつられるようにして、泣き出した。
「泣くな、チェント」
自身も泣くのを必死に堪えながら、兄は私の頭に手を置いた。
「母さんたちはもういないけど、もういないから……。これからは俺が──」
その時に続けた兄の言葉を、私はよく覚えていない。
兄は、何と言ったのだったか……。
大事なことだったような気がする。しかし、私はそれをどうしても私は思い出せないでいた。
血に濡れたベスフル軍の本陣の前で、私とスキルドは再会した。
スキルド……。
私は呆然と、彼を見つめいてた。
どういう顔をすればいいかわからなかった。
お互いしばらく立ち尽くしていたが、彼は、
「……チェントだよな? こんなところにいたのか!?」
無くしたものをようやく見つけた、とばかりに駆け寄ってきた。
「来ないで!!」
私は思わず叫んでいた。
彼の足が止まる。私の言葉に戸惑っているようだった。
「……チェント?」
彼は右手を前に伸ばしたまま、固まっている。
「兄さんから聞いていないの? 私、魔王軍にいるんだよ? 敵なんだよ?」
私は目を伏せたまま、彼に告げた。
淡々と言ったつもりだったが、僅かな声の震えを隠しきれていなかった。
かつて
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