賑やかな夕食
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だろう。
そんなことをメイドに話せば、紅茶を注ぎながら、嬉しそうに顔をほころばせた。
「メイドの私がこのようなことをいうのはおこがましいことなのですが」
緩やかに湯気の立つコップが、アレスの前に置かれる。
「お嬢様が士官学校に入られたことは非常に良い事だったと思います。どうかマクワイルド様、末永くお嬢様をよろしくお願いいたします」
「こちらこそ」
丁寧に頭を下げれば、同意するようにアレスは頷いた。
「しかし。ライナお嬢様が料理を習いたいといったりゆ……」
「マーガレット」
言葉を続けようとしたメイドを、背後から咳払いが邪魔をする。
「これはお嬢様――秘密でございましたね」
「もう」
戻って来たライナに、メイドが口元を抑えると、静かに一礼をして立ち去る。
扉が再度閉まれば、ライナが頬を赤らめて、アレスに向き直った。
「本当にここは余計な言葉が多い方たちばかりで」
「いやいや。楽しい家じゃないか」
「そう言っていただけると、幸いかと思慮いたします」
少しだけ肩をすくめれば、ライナは再び席へと戻った。
とんっと机の上に、皿が置かれる。
おそらくはそれを取りに言っていたのであろう。
何かと皿の上を見て、アレスは目を開いた。
「これは――羊羹」
それは――何十年ぶりの和菓子だ。
食べることはもちろんであるが、現代では見ることすらない。
驚くアレスに、ライナはどこか嬉しそうで、照れたように笑う。
「あ。アレス様が……その日本食というものを好きとお聞きしまして。私も食べてみようかと購入したものです」
「いや。好きだけど……どうしてそれを」
「それは。アレス先輩が……食事に行ったと…。い、いいじゃありませんか。それよりもどうぞ召し上がってください」
アレスの問いに、答えるライナの声は非常に小さい。
確かに日本食を食べには言ったが、それをなぜ知っているのか。
疑問は残されたが、それでもアレスは久しぶりの和菓子を優先した。
さすがに爪楊枝はなかったため、ケーキ用のフォークで一口する。
懐かしい甘さが口に残り、続いて紅茶を飲めば、わずかな渋みが引き立った。
「ありがとう」
「いえ。買っておいて、本当に良かったと思います」
そんなアレスをライナは、幸せそうに見ていた。
+ + +
ライナにとっては、短くも長い夜は終わりを告げた。
客人を招いた夕食――それは、今までのお見合いと同様に豪華な食事であったが、今までの何よりもおいしく感じられた。
アレスと食事をとった事など、ほとんどない。
ましてや一緒の食事を、ともにするのは初めてのことだ。
アレスの話は非常に博学で、特に地球時代の企業の話など初めて聞くことが多かっ
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