221部分:第十五話 労いの言葉をその十一
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第十五話 労いの言葉をその十一
「この世における最高の芸術だ」
「その芸術がこれからも聴ければいいのですが」
「本当にプロイセンが来なければ」
「それに越したことはありませんが」
「ビスマルク卿は確かに策略を使い軍を動かす」
それでもだというのである。ビスマルクについてもだ。
「だがそれは必然としてしているだけだ」
「だからですか」
「我々は今は」
「落ち着けばいい。では音楽を聴こう」
そのワーグナーのことをだ。聴くというのである。
そうしてそのうえでだ。王は実際にワーグナーを聴いた。そうして時間を過ごしていく。時間が過ぎるとだ。次第に明らかになってきた。
プロイセンはオーストリアに対してサドワ以上のものは求めなかった。当然ウィーンにも入城しない。圧勝したとは思えない程寛大な条件でだ。オーストリアと講和したのである。
それを見てだ。誰もが唖然となった。それはフランスでもだ。
「馬鹿な、あの程度か」
「あれだけの条件でいいのか?」
「多額の賠償金や広大な領土」
「そうしたものを手に入れないのか」
「ビスマルクは強欲な男だが」
これは偏見だが多くの者はそう見ていなかった。
それでだ。彼等は口々に言うのだった。
「だが。何故だ」
「オーストリアに対してあの程度で終わらせた」
「そしてそれによってだ」
どうなっているか。それも問題だった。
「オーストリアのプロイセンへの感情が変わったな」
「憎しみに満ちていたというのに」
「呆気に取られてから」
それからなのだった。
「プロイセンを見直している」
「やがてはプロイセンを手を組みかねないまでだ」
「まずいな、このままでは」
「プロイセンとオーストリアが手を組めば」
どうなるか。彼等はそのことを考えだした。
「まさに大ドイツだ」
「中欧を牛耳られてしまう」
「フランスにとっても脅威だ」
「座視できないぞ」
「しかもだ」
さらにであった。彼等の不安はまだあった。
「プロイセンはロシアとも手を組もうとしている」
「では三国同盟だな」
「プロイセンとオーストリア、そしてロシア」
「プロイセンの東への脅威はなくなる」
「そうなればまずいな」
「まずいどころではないぞ」
フランス、そしてフランス人の間にだった。危機意識が漂っていた。
そしてその危機意識はだ。あまりにも強かった。
「このままプロイセンが伸張すればだ」
「抑えられないのではないのか?」
「只でさえイギリスがいるのだ」
言うまでもなくフランスの宿敵だ。フランスは常にイギリスと戦ってきた。そして東にだ。神聖ローマ帝国やオーストリアを持ってきたのである。
そのことを念頭に置いてだ。彼等は話すのだった。
「ここでプロイセンまで抱えて
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