第四章
第35話 神
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想に至らなかったのだろう。
「あの。音信不通が続いたのであれば、その原因を調査しようとは思わなかったのでしょうか?」
「そうだな。そこで今回お前が丁度よいと思い、調査および解決のために使うことにしたのだ」
「その役目は俺が最初なんですか」
「そうだ」
突っ込みを抑えるのが大変だった。この神の対応はあまりに遅すぎる。
召喚者の行方不明が何件も続き、やっとおかしいことに気づき、動く? 尋常な感覚ではない。
先ほどの話から推測するに、直近に召喚したのが九年前のトヨシマ、その前が二百年前のヨネクラだから、その前にもいたのであれば、数百年、下手すれば千年以上前にも召喚行為をおこなっていたことになりそうだ。
ということは。この神、若く見えるが、もうかなり長いこと神をやっているのだろう。活動期間が長すぎて、すっかり怠惰になってしまっているのだろうか?
トヨシマ含め召喚された人間は、いきなり呼び出されてパシリにされた挙句、敵組織に消されて死んだのだろうか?
もしそうであれば、全員この神の怠慢のせいで死んだということになる。まったく浮かばれない。
今すぐ殴りたい気分だ。
「でも……どうして文明の進歩を無理にコントロールする必要が? 停滞しようが勝手にさせておけばいいと思うんですが」
「わたしも基本的には干渉する必要はないと思っている。しかし、本来は干渉せずとも勝手に進歩していくはずの文明が、ずっと不自然に停滞していた。化石燃料が満足に確保できないとしても、それなりの進歩の仕方はあるはずだ。
わたしがおこなう干渉は、不自然な流れを自然な流れにするための措置となる」
「でも、停滞させているのも自然の一部≠ナある人間なんですから、そこに神さまが介入することのほうが不自然なんじゃないですか?」
俺の時代でも、自然ではなく人為による環境破壊が問題となっていた。
だが人間も自然界の生物であるわけだから、「自然ではなく人為」というのは、その言葉自体が矛盾する。
どんなに人が破壊しようが、その環境が「自然ではない」などということはないはずだ。
しかし、神からは意外、かつ理解不能な返事がきた。
「神も自然の一部≠セ。それでわかるか」
「……いや、さっぱりわかりませんが」
「そうか。お前は別に納得しなくても構わぬ。こちらの指示通り動いてくれればよい」
神は生態系の一部であり、ピラミッドの頂点だとでも言いたいのだろうか。
もっと突っ込んで聞いてみたいが、顔を見ると、無表情の中にも気だるそうな感じがわずかに滲み出てきている気がした。
面倒――そう思っていそうだ。
うーん……。
「もうそちらの質問はよいな? この時間はお前の好奇心を満たすための時間ではない」
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