219部分:第十五話 労いの言葉をその九
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第十五話 労いの言葉をその九
プロイセン軍がウィーンに入城し略奪の限りを尽くしている、ウィーンは最早荒地と化している、こう大袈裟どころではない報告を送った。
それを見てだ。フランス皇帝は言った。
「まさかこうなるとはな」
「はい、何年もかかると思っていましたが」
「それが。これだけ短期で決着がつくとは」
「ウィーン陥落ですか」
「予想外のことです」
「いや。ウィーンは陥落していない」
ところがだ。皇帝はだ。大使のその報告は否定した。
そのうえでだ。彼はこう大臣達に話した。
「大使は大袈裟に言い過ぎだ。サドワからウィーンまで距離がある」
「ではプロイセン軍はまだですか」
「ウィーンに向かっていても入城はしていない」
「そうなのですか」
「そうだ。まずは安心していい」
こうだ。大臣達に話したのである。
「だが。このままではだ」
「プロイセンが勝ち過ぎますね」
「これは由々しき事態です」
「フランスにとっても看過できません」
「とてもです」
「その通りだ。兵を動かすのだ」
フランス皇帝は言った。
「北ドイツ連邦との境にだ。兵を送れ」
「わかりました、それでは」
「今すぐに」
こうしてだ。フランスはプロイセンが得るものを得過ぎるのを避ける為にだ。兵を動かそうとしたのである。そうしてだ。
バイエルンでもだ。恐慌状態に陥っていた。サドワでの勝利は誰が見ても決定的なものだった。オーストリアについている彼等にとってはだ。
危機以外の何でもなかった。それでだった。プロイセンを恐れることしきりになっていた。
「プロイセン軍はこちらにも来るぞ」
「そうなったら勝てるのか?」
「もうオーストリアは立ち上がれない」
「どうすればいいのだ」
こうだ。恐慌の中で話すのだった。
バイエルンの何処でもだ。これからのことに不安を感じていた。それは宮廷でも同じでだ。顔を顰めさせてひそひそと話していた。
「まずいですな」
「ええ、この事態は」
「まさか。オーストリアがこうも呆気なく敗れるとは」
「こうなっては同盟国の我々もどうなるか」
「困ったことになりました」
こう話が為されていた。しかしだ。
王だけは冷静であった。何も動じずだ。彼は音楽を聴いていた。
ソファーに座りだ。コーヒーを飲みつつだ。彼はビューローに告げていた。
「タンホイザーを頼めるか」
「どの曲にされますか?」
「序曲がいい」
それをだと。優雅に話すのである。
「それを頼めるか」
「わかりました。それでは」
「あの序曲もまたいいものだ」
王は優雅に微笑んで述べた。
「清らかでいてそれでいて」
「官能的ですね」
「そうだ。清らかな官能だ」
それだというのである。
「あの序曲はローエン
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