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レーヴァティン
第七十三話 出発その九

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「わたくし好きなのです」
「そうだったのか」
「ホルモン等も好きです」
 こちらもというのだ。
「よく食べています」
「意外だな」
「意外ですか」
「ああ、あんたが内蔵好きだとかな」
「子供の頃親に身体にいいと言われて食べて美味しかったので」
 それでというのだ。
「ですから」
「今も食べてるのか」
「はい、こちらの世界でも」
「内臓料理食ってるんだな」
「ギドニーパイも好きです」
 豚の肝臓のパイである、久志達の世界ではドイツでよく食べている。
「そしてソーセージは特に」
「ああ、ソーセージも内蔵だしな」
「はい、そうですね」
 豚や牛、羊の腸に挽肉等を詰めたものだ、これも内臓料理と言えばそうなる。
「それもです」
「好きか」
「ソーセージを茹でて」
 やや熱い目になって言う夕子だった。
「ビールやワインを飲むことは」
「聞いてるといいな、それだけで」
「では」
「ああ、今からな」
「お店に入りましょう」
 夕子もこう言ってだった。
 一行はその店に入った、そうしてステーキやシチュー、グリルといった肉料理を頼んだ。当然パイやソーセージ等も注文した。
 そしてだ、久志はマトンのステーキを食べてこう言った。
「これはな」
「美味いだろ」
 芳直もマトンのステーキを食べつつ久志に応えた。
「俺っちが言った通りにな」
「ああ、御前の勘と鼻か」
「美味い料理ってのはまずはな」
「匂いが違うか」
「美味そうな匂いってあるんだよ」
 芳直はそのステーキをフォークとナイフで切って口の中に入れている、そうしつつ久志に言うのだった。
「焼き加減とか味付けがな」
「その匂いでわかるか」
「そうなんだよ」
 まさにというのだ。
「本当にな」
「それでか」
「ああ、俺っちはわかってな」
「俺にも言ったか」
「この肉も食べ頃だしな」
「ああ、肉ってな」
 久志は肉の食べ頃について芳直に応えた。
「新鮮がいいかっていうとな」
「少し違うんだよ」
「そうだよな」
「腐らしたら駄目だけれどな」
 これは論外である。
「腐りかけもな」
「いいっていうな」
「程よく置いて食うのがいいんだよ」
「この店はそれがわかってるんだな」
「そうだな、日本人はどうしてもな」
「新鮮が一番いいって思うな」
「それは魚介類だよ」
 こちらのことだというのだ。
「何でもかんでも新鮮が第一っていうのはな」
「日本人はどうしても魚だからな」
「そうした考えが染みついてるけれどな」
「実は肉は違うか」
「カサノヴァだって腐りかけの肉が好きだったんだよ」
 稀代の色事師と言われた彼もだ、とかくそちらの話で有名であるがその他の逸話もあったりするのだ。
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