第七十三話 出発その七
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「そうなんだな」
「ああ、ここええ牧草で有名やで」
美奈代もこう言った。
「実際な」
「そうなんだな」
「ええ牧草がよおさんあってな」
「それでか」
「家畜も育つねん」
牧草を食べる彼等もというのだ。
「それでこの近くには森もあって」
「森の恵みも家畜が食ってるんだな」
「豚がドングリ食べるねん」
「ああ、豚の餌にドングリっていいんだな」
「人間が食べるには手間暇かかるけどな」
その渋みを取るのに随分と苦労する、少なくとも拾ってすぐに食べられる様な代物ではない。
「豚はちゃうから」
「すぐに食わせてか」
「それで太らせて」
「いい豚肉にするんだな」
「言うならリベリコ豚や」
最近日本でも有名なこの豚然りというのだ。
「ここの豚はな」
「実際にそうじゃないかな」
剛は美奈代の話を聞いて述べた。
「ここの豚はね」
「リベリコ豚かいな」
「それで美味しんじゃないかな」
「ドングリも食べてて」
「そうじゃないかな」
こう言うのだった。
「やっぱり」
「そうなんだね」
「ほなここで何か食べるん?」
「そうだな、丁度昼だしな」
それならとだ、久志も美奈代の提案に応えた。
「何か食うか」
「じゃあその豚か牛か羊か」
「どれにしても肉だな」
「それにするんやね」
「ああ、折角だしな」
その牧場の家畜達を見つつだ、久志は美奈代に応えた。牛はホルスタインが多いがどの牛もよく肥えていてしかも大きい。
「肉にするか」
「うち肉好きやで」
美奈代は肉と聞いて笑って言った。
「前のキマイラもよかったけどな」
「そういえばあの肉かなり食ってたな」
「そやろ、肉って聞いたらな」
それこそというのだ。
「いてもたってもらいられへんねん」
「そこまで好きかよ」
「特にすき焼きが好きや」
「いや、すき焼きはこっちの島ないからな」
久志もそこは断った。
「流石にな」
「こっちは西洋やさかいな」
「流石にな」
すき焼きはというのだ。
「ないからな」
「そやな」
「だから別の食うぜ」
「ほなステーキか」
「ステーキでも何でも肉だな」
こう言いつつステーキも忘れないと決めた久志だった。
「たらふく食うか」
「よし、じゃあ近くの店に入るか」
芳直も言ってきた。
「美味そうな店にな」
「さて、どの店がいいか」
「ここじゃないのか?」
芳直は目の前に丁度あった店を指差した。
「よさそうなのは」
「御前目に入ってすぐに言ってないか?」
「人を蟷螂みたいに言うなよ」
蟷螂は動くものを生物とみなして反応する習性がある、尚蟷螂にとって生物はそのまま餌か敵となる。
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