215部分:第十五話 労いの言葉をその五
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第十五話 労いの言葉をその五
「このままでいるべきだ」
「今戦争は」
「オーストリアにとって不利になってきているな」
「はい」
その通りだった。今はだ。
オーストリア軍は各地で敗れ続けていた。モルトケの作戦と鉄道を使った群の集中運用の前にだ。敗北を重ねていたのである。
誰もが予想しなかったまでにだ。彼等は敗れていた。
そして遂になのである。
「サドワに両軍が集まっています」
「あの場所にか」
「ここで決戦でしょうか」
「そうだな。あの場所でおおよそのことが決まるな」
白い花火を見ながら話すのである。
「この戦争がだ」
「何年もかかると思われていましたが」
「いや、短くなると思っていた」
「陛下はですか」
「そうだ、思っていた」
王はだ。そう見ていたというのである。
「少なくとも三ヶ月もかからない」
「そこまで短いのですか」
「戦争は長引かせるものではない」
戦いは嫌いでもだ。それはわかっているのだった。
「決してだ」
「ではプロイセンは一気にウィーンまで」
「いや、それはない」
「ウィーン入城はありませんか」
「そこまですれば取り返しがつかない」
「取り返しとは?」
「そうだ、取り返しがつかなくなる」
こうホルニヒに話すのである。
「そこまですればな」
「戦争をしているのにですか」
「戦争は政治だ」
ここで王は言った。このことをだ。
「政治ならだ。ある程度で折り合いをつけなければ駄目だからだ」
「それでなのですか」
「そうだ。プロイセンはオーストリアを破っても」
それでもだというのだ。先を見据えながら。
「オーストリアからは多くを手に入れない」
「多くを」
「決してな。むしろだ」
「むしろといいますと」
「オーストリアが驚く様なことになる」
こうだ。王は言うのであった。
「そうしたことになる」
「オーストリアが驚くとは」
「ビスマルク卿は今は好戦的だ」
あくまで今に限っている。現在にだけだ。
「だが。目的を果たせばだ」
「それが変わるのですか」
「そうだ。戦争は何の為にあるか」
それだった。問題はだ。
「それは政治的な目的を達成する為なのだ」
「戦争に勝利をすることではないのですね」
「そうだ。目的を果たす為だ」
あくまでだ。その為だというのだ。
そしてだ。王はさらに話すのだった。
「今の戦争もだ」
「今のプロイセンの目的は」
「オーストリアに勝利することではない」
それよりだ。先にあるというのだ。
「ドイツを築くことだ」
「ドイツを一つの国にする」
「それなのだ。オーストリアとの戦争はその為に必要なのだ」
遠くを見てだ。そのうえでの言葉だった。
「一旦あの国をドイツから排除しなければ
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