第四章
第34話 交信の試み
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したのか。気になる。
だが、今は百人の人間を拘束している。クロへの事情聴取は、帰ってからゆっくりおこなうことにしよう。
「皆さん、うまくいったそうです。ありがとうございました。次は本殿に移動しましょう」
そう言ったのに、兵士たちはみんな俺のほうをポカーンと見ている。
あれ?
「オオモリ・リク……今のは独り言か?」
この場を代表するように、ランバートが声を絞り出してきた。
――ああ、そうか。
俺以外の人間は、クロの話している言葉がわからない。
慣れている女将軍やカイル、そして戦争で本陣にいた兵士以外は、俺とクロが会話している光景に免疫がなかったのだ。
「フフ、そなたは知らなかったのか? リクはその霊獣様そっくりの犬と話ができるのだ」
「なぜ貴女が誇らしげに答えるのだ……。まあそれはおいといてだ。オオモリ・リクよ。お前の時代は、普通の人間なら誰でも犬と会話ができたのか?」
「いえ、普通はここまで複雑な会話まではできないです。俺もタイムワープの拍子でクロとだけ出来るようになったということみたいで、クロ以外の犬とは不可能です」
「そうか……お前が特別というだけのことなのだな……。おれには普通の人間が犬と意思疎通というのは考えられない」
「あ、でも複雑な会話はできないというだけで、意思疎通ということでしたら、俺の時代では犬を飼っている人なら誰でもできていましたよ? 身振り手振り、もしくは簡単な言葉で」
「な、何と。誰でもと申すか」
ランバート以下兵士たちは、本当に驚いている
やはりこの時代の人にとっては、犬と人間が意思を疎通させるということ自体が常識外なのだ。俺がいた時代では、みんな当たり前のようにやっていたのに。
もっとも、俺に限って言えば、この時代に来るまでは全然できなかったわけだが。
……そう言えば。
ふと、疑問に思った。
元の時代に戻ることと直接関係がなさそうだったこともあり、今まであまり考えたことはなかったが……。
俺とクロが会話可能になったのは、いったいなぜなのだろう?
それも、俺をワープさせた何者かの仕業なのだろうか。
そうだとすれば、いったい何の意味が。
まあ、今ここで考えても仕方ないのかな?
さて。
今度は俺が祈ろう。
霊獣像の祠とは違い、本殿は大きいので、半円状に護衛が取り囲む。
俺は前に出ようとした。
が、その前に。付き添いのお願いをしないといけない。
「すみません。前にお祈りしたとき、突然体調不良を起こして失神したので、どなたか体を支えてもらっていてもいいですか?」
「あ、オレ支えてるよー!」
「では私も支えようかな」
「おれも手伝おう。安心して祈れ」
カイルと二将軍
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