53話:暗雲
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擦り付けようとした両人が犯人ではないと判断していると伝われば良いと思う。つまり、今回の対応策を公式には両家から提案してもらえばよいだろうね」
ザイ坊が対策案を話し始めたが、そこで少し間が開いた。
「対応策の内容としては、この一件に関わった医師・看護婦・メイドの全員に辞してもらう。職をという意味ではなくね。こういうことが今後起こるとしても報酬が必要だ。だけどどんな報酬もあの世には持っていけない。もし、対象者を推薦した貴族がいたらそっちにも何かしら罰を与えれば、なお良いだろうね」
そこまで言うと、椅子から立ち上がって窓際に移動して窓の外に視線を向けた。
「両家には貸しがあるから、こちらで動くこともできるけど手配を進めて良いかな?」
「それは大丈夫じゃ。こちらで手配できる」
お互い視線を合わせぬまま話を続ける。厳しい対応だが、ザイ坊の言う通りだ。ここまでせねば再発の可能はぬぐえぬ。
「それにしても継承がほぼ確定しているのに、赤子を危険視するとは、兄貴の即位の経緯をを踏まえても良からぬことを吹き込んだ奴がいるね。できれば真犯人には弑された事が解るように手配できれば今できる対応策としては及第点だと思うけど」
「お気に入りのメイドの兄が、色々と吹き込んでいるという話じゃ。分かった。そちらも併せて手配しておこう」
しばらくお互い黙ったままで時が流れた。必要なこととは言え、無実の者も死罪とすることになる。憂鬱だったが、ザイ坊を共犯者にしてしまったことも心を重くしていた。
「叔父貴、さすがにこれは一人で抱え込むには重すぎる話だよ。それに余程の信頼が無いと話せる内容でもない。俺を選んでくれた事、光栄に思うよ」
窓の外に向けていた視線を、儂に戻してザイ坊が心情を話してくれた。対応策は決まったし、儂の腹も決まった。あとは手配するだけだ。ザイ坊はもう一杯お茶を飲むと、応接室を辞していった。帰り際にケスラー候補生に励ましの言葉をかけて地上車に乗り込む。儂はザイ坊が乗った地上車が見えなくなるまで見送りを続けた。
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