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稀代の投資家、帝国貴族の3男坊に転生
53話:暗雲
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いけど、そうもいかなそうだ」

こやつは話が早くて楽だが、内容が内容だけに、躊躇する気持ちもある。儂の心境を察したのか、ザイ坊はティーカップにお茶を注ぎ、それぞれの手元に置くと、黙ってお茶の香りを楽しみながら、間をおいた。そんなに長い時間ではなかったが、応接室に静寂が訪れる。思い切って口を開こうとした際に

「叔父貴がそこまで話しにくい事は一つしかないからなあ。皇室の血を引く男子が死産となれば、この宇宙でメリットがあるのはただ一人。なのに変な噂が流れている。どうしたものかって所かな......」

悲し気な表情をしながらザイ坊が先に言葉を発した。

「その通りじゃ。陛下もうすうすは気づいておられると思うのじゃが、知らぬふりをしておるやもしれぬ。相談するわけにもいかぬし、儂には良い対応策は思いつかなんだ。こんなことに巻き込むのは不本意じゃったが、他に相談できるのはお主だけじゃ。何か良い案があればと思って、時間を取ってもらった次第じゃ」

3年前に子爵家から売られるように陛下の寵姫となった少女は、今ではベーネミュンデ候爵夫人として陛下のおそばにいるが、臨月を迎えたものの、死産という結果になった。それまでの診断では全く異常はなかった事から、正常に生まれたのも関わらず、弑されたのではないかという噂が流れ始めたのがひと月前。その噂には尾ひれがついて、自分たちの娘を帝位に就けるためにブラウンシュヴァイク公爵かリッテンハイム侯爵が首謀者なのではという話になっている。
だが、少しでも宮廷に詳しいものなら、両人がそんなことをしても無意味なことが解る。なぜなら皇太子殿下がすでに居るからだ。本来なら縁戚として一番当てにできる藩屏に自分の罪をなすり付けたわけだ。仮に皇太子殿下が帝位に就いた所で、忠誠を期待することはできないだろう。思わずため息がでた。

「叔父貴、事実かは別にして、真犯人候補は候補としても公にはできないだろうけど、今回の件がなあなあで済まされると、今後も同じようなことが起きかねない。今いえるのは、再発を防ぐことしかないと思うし、出来れば誰が犯人か分かっているとメッセージを発したい所だね」

いつもは楽し気なザイ坊が憂鬱な表情をしている。こんな話に巻き込んでしまい、改めて罪悪感が胸に広がった。

「そうしたいのはやまやまだが、良い案が浮かばぬのだ。済まぬな、こんな相談を持ち掛けてしまって」

「気にしないでよ。ザイ坊と叔父貴の仲じゃないか。それに叔父貴も基本的に優しいからね。こういう話は判断に迷って当然だと思うよ」

そう言うと再びティーカップを手に取り、少しお茶を口に含んだ。儂も気づかなかったが、喉がかなり乾いていた。ティーカップを手に取り、お茶を飲む。

「まずは犯人は誰か分かっているというメッセージだけど、これは罪を
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