53話:暗雲
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「別にパトロンといっても、お金を出すだけがパトロンではないのだ。自分の知り合いでそれなりの方に作品を紹介するだけでも、かなり助かるはずだ。違うかな?」
俺が言いたいことが伝わったようだ。
「閣下の意図は承知しました。併せてなのですが寮で同室の候補生もかなりの才能の持ち主です。お屋敷に飾ってもよろしいでしょうか?」
「ワルターの感性に響くものがあるなら任せよう。いつもの口座に予算を振り込んでおくよ。その代わり、オーベルシュタイン卿とロイエンタール卿を一度オペラに連れて行くようにね。何ならアルブレヒトも一緒で構わない。好む必要はないが、知らないでは済まないからね。頼むよ」
ワルターは少し困った顔をしたが『手配しておきます』と言って、執務室を下がった。まあ、博愛主義もほどほどにしろと言うメッセージも伝わったようだ。あとは晩餐まで執務に当てられる。俺は工事計画書を手に取り、執務に戻った。
宇宙歴780年 帝国歴471年 6月上旬
首都星オーディン グリンメルスハウゼン邸
リヒャルト・フォン・グリンメルスハウゼン
困ったことになった。この件は内密にせざるを得んが、かといって何も対応をせぬわけにもいかぬ。儂だけで対応策を考えるのも限界があるし、今回ばかりは陛下に相談するわけにもいかぬ。うすうす気づいておられるやもしれぬが、知らぬふりをしているやもしれぬ以上、相談するわけにはいかぬ。
こんなことをザイ坊に背負わせるのは不本意だが、事がこじれれば軍部にも影響が出るじゃろう。それに儂では思いつかぬ対応策を出すやもしれぬ。そんなことを考えているとドアがノックされ、ケスラー候補生が入室してきた。
「子爵様、前触れが到着されました。まもなくリューデリッツ伯が到着されるとのことです。過去に会食にてお会いしたことがございます。お出迎えの際にご挨拶させて頂いてもよろしいでしょうか?」
儂が了承の旨うなずくと嬉し気に応接室を出て行った。領地でなかなか見所がある若人だった為、士官学校の学費を当家で持つ形で援助した。任官先は憲兵隊を予定しておる。いずれは儂の密命を手伝ってもらえればとも思うが、日陰の身にしてしまう事を思うと、心苦しくもある。しばらくすると地上車の音が聞こえ、人の気配が近づいて来た。ケスラー候補生がドアを開け、道を開ける。続いてザイ坊が応接室に入ってくる。席に付くの待ってから
「ケスラー候補生、ドアの外で待機してくれぬか。余人を交えず話がしたい。誰も近づくものがおらぬようにしておいてくれ」
了承の返事をするとドアが閉まる。既にお茶の用意もしてある。少し冷めてしまったが、話の内容を聞けばザイ坊も納得するであろう。
「叔父貴が酒を飲んでいないなんて余程の事だね。叔父貴なら顔を見たくなったって話でも構わな
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