53話:暗雲
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宇宙歴780年 帝国歴471年 6月上旬
首都星オーディン リューデリッツ邸
パウル・フォン・オーベルシュタイン
「それで、任官の件だが、フェザーン駐在武官として一年間赴任するのと、第11駐留基地の改築が完了して補給体制を確立するまでの2年間、私の副官として勤めた後にフェザーンへ赴任するのと、どちらがいいかな?まあ、すぐに決めなくても今年いっぱい位は悩んでもいいと思うが......」
任地のアムリッツァ星域第11駐留基地から急遽、閣下がオーディンに戻られたのが昨日の事だ。内々の話があるとのことで、長年お付き合いのあるグリンメルスハウゼン子爵に呼び出されたらしい。今日は丁度スケジュールの空きがあったので、任官の件で事前に意向を確認したいと、執務の合間にお茶を飲みながら相談する事となった。
正直、どちらもとても良い話だが、改築計画書を見ただけだが、第11駐留基地は新しい構想を軸にした改築を行ったはずだ。今後の駐留基地のベースとなる可能性もあるので、その運営に関われるのは、軍歴の出発点には最適だろう。任務を実際に経験したうえで、再度フェザーンで学びなおせるというのも、研鑽の面でプラスになりそうだ。
「閣下、お手数を2回かけることになりますが、任官は第11駐留基地でお願いしたく存じます。一度、任務を経験したうえで学びなおす形になります。その方が将来、お役に立てると存じます」
「分かった。私もその方が色々と為にはなると思う。最もRC社の案件をすでに経験しているから、そこまで大きな差があるかは何とも言えないが、第11駐留基地は色々と新しい新しい試みを導入しているからね。オーベルシュタイン卿がいてくれれば心強い」
私の判断に、閣下も賛成して下さった。ただ、事あるごとに賞賛して下さるが、私自身は賞賛に値することができているとは思っていない。RC社の事業にしても、今回の第11駐留基地にしても、実際に計画が形になった後に改善点を見つける事など、少し優秀な知能と経験があれば誰にでもできる事だ。
一番難しいのは、計画を実行する根回しであったり折衝にある。どんなに素晴らしい案でも実現できなければ価値はない。閣下はそれができる権限も、財力、人脈もお持ちだ。私自身が、まだ閣下の庇護下だからこそ機会を頂けていることは理解している。昇進していくにつれて、財力はともかく人脈を養う事も必要なことだろう。
「オーベルシュタイン卿、人脈は作るモノではなく、出来るモノだ。私もいるし、軍部は卿が将官になるくらいまでは風通しが良いはずだ。しっかり後進達の力になってあげる事だ。そういう縁が、いずれ人脈になって卿を助けてくれるだろう」
私の考えなどお見通しだったのだろうか、そういう話であれば、シェーンコップ卿やロイエンタール卿の座学も担当したし、ご嫡男のア
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