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緑の楽園
第四章
第33話 何者かの意志
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いう人物の件だ。

 九年前の発掘調査にかかわる資料は、閉架書庫にしっかり所蔵されていたそうだ。
 全部ひっくり返して調べてくれたらしい。

 やはり当時の資料には、彼の名前が入っているものが多く見つかったとのこと。打ち合わせ議事録には、肩書きが「臨時技術顧問」となっていたようである。
 『臨時』であること。技術者という割には、発掘調査にかかわる資料以外に名前が出てこないこと。当時の調査員も、口をそろえて「来歴が謎」と言っていること。
 これらのことから、タイムワープ者であることはもう間違いないだろう。

 彼のその後の行方についてはやはり資料がなく、一切不明だそうだが、個人的にはヤハラら敵の『組織』から危険人物とみなされて拉致、もしくは消された可能性が高いと思っている。
 何の技術も持たない俺でも、あのようなことになった。俺でさえそうだったのだから、発掘調査のプロなどは敵組織から見て脅威以外の何物でもなかっただろう。
 先代国王の射殺、そしてトヨシマの拉致または殺害。敵組織にとっては、セットで一計画だった可能性が濃厚だと思う。

 王立図書館ではこれ以上の情報は出てこないと思われるため、担当者にはこれで調査を〆てもらうことにした。
 俺としては、彼がワープ者であることがほぼ断定できたというだけでも、大戦果である。

 戦争参加と引き換えに協力してもらえることになった、首都での調査――。
 これで一段落ついたことになる。
 協力してくれた担当者には感謝だ。



 さて。トヨシマが転移者であるのがほぼ確実だとして。
 新たな疑惑が出てくる。
 それは「タイムワープ」という現象に意思≠感じてしまうということだ。

 以前の調査で名前が挙がった、全土地図の完成に重要な役割を果たしたヨネクラ。
 ワープ者がこの人物だけだったのであれば、たまたまタイムワープした人が測量技術者であり……という解釈で済むかもしれない。

 しかしこれに、発掘調査の技術指導に大きく貢献したトヨシマ、というのが加わるとどうだろう?

 測量技術にしろ、発掘技術にしろ、どちらもこの世界の文明のレベルを引き上げることにつながる。
 タイムワープに巻き込まれた二人が、どちらも偶然そのような技術を持っていた。そして二人ともその技術を実際に生かし、この国の歴史を変えようとした――
 それは少し不自然な話にも感じる。

 まずは確率の問題がある。
 俺の時代だと、年間で千人以上は行方不明になって帰らないままだと聞いたことがある。
 実はその千人全員がこの時代にタイムワープしていた、などということであれば、確率的に文明レベル引き上げに寄与する人間が出てきてもおかしくはない。

 だが、それだけの数がタイムワープしているなら
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