第四章
第33話 何者かの意志
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ない。
……というか。国王はこいつに余計なことを言わんでおいてほしいのだが。
「……報告書ってさ」
「ん?」
「オレも何度か書いたことあるけど、書きながらその時のことをいろいろ思い出しちゃって、進まないことがあるよね」
「ああ。確かにそうだな」
この少年の言うとおりである。
今回は、書きながら、反省と自己嫌悪のループだった。
どうも、あまり自分は成長していない――そう思う。
ロールプレイングゲームに例えると、タイムワープしてから今に至るまで、レベル1のままストーリーだけが進んでいるような状態だ。
イベントをこなしてレベルアップとか、種を食べてステータスアップとか、仲間が戦えば自分も自動的に経験値アップとか、そんなことがあればいいのにと思う。
なかなか、ゲームや小説、漫画の登場人物のようにはいかないものだ。
現実は厳しい。
「兄ちゃん、今いろいろ考えてたでしょ。手の動きが少し乱れたね」
――むぅ。鋭いなぁ、こいつ。
「やっぱり俺って成長してないしダメだなーって思ってただけだよ。相変わらず力もないし度胸もないってね」
「ふーん。オレは兄ちゃんがダメだなんて思ったことないけどね」
「それは身内補正ってやつだ。どうしても採点が甘くなるからな」
「そんなことないよ? 力は今でも十分強いと思うし。遺跡で陛下が殺されそうになったときも身代りになったんでしょ? そんなの度胸がないとできないよ」
「いやーあれはちょっと違うような……」
遺跡で国王暗殺未遂事件があったときは、国王をかばうために体が動いた。
怖いと思って躊躇することもなかった。
けれども。今思えば、あれは俺が平和な日本育ちだったがゆえにできたことだ。拳銃で撃たれるということに、リアリティが全然なかったからだと思う。
もう一回同じことができるかと言われれば、恐らくできない。
あの痛さは一生忘れることはない。体に染みついてしまっている。次に同じシチュエーションがあっても、恐怖で体が動かない可能性が高い。竦んで見ているだけになるだろう。
「あ!」
「ん?」
「今『身内』って言ったよね。へへへ……身内だ」
「記憶にございません」
「……」
「ハイ終わり」
「えー、もう終わりなの」
「これ以上あなたを喜ばせたくないので終わりです」
「もー。ひどいなあ」
腕をつかみ、カイルを無理矢理起こす。
「あ! お前ヨダレ垂らしただろ!」
「だって気持ちいいんだもん」
***
療養期間中に、以前から城の担当者へ頼んでいた各調査のうち、まだ〆ていなかった『王立図書館での調査』についての報告をもらった。
九年前に遺跡を発見したとされている、トヨシマと
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