暁 〜小説投稿サイト〜
緑の楽園
第四章
第33話 何者かの意志
[3/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ない。

 ……というか。国王はこいつに余計なことを言わんでおいてほしいのだが。

「……報告書ってさ」
「ん?」
「オレも何度か書いたことあるけど、書きながらその時のことをいろいろ思い出しちゃって、進まないことがあるよね」
「ああ。確かにそうだな」

 この少年の言うとおりである。
 今回は、書きながら、反省と自己嫌悪のループだった。

 どうも、あまり自分は成長していない――そう思う。
 ロールプレイングゲームに例えると、タイムワープしてから今に至るまで、レベル1のままストーリーだけが進んでいるような状態だ。
 イベントをこなしてレベルアップとか、種を食べてステータスアップとか、仲間が戦えば自分も自動的に経験値アップとか、そんなことがあればいいのにと思う。

 なかなか、ゲームや小説、漫画の登場人物のようにはいかないものだ。
 現実は厳しい。

「兄ちゃん、今いろいろ考えてたでしょ。手の動きが少し乱れたね」

 ――むぅ。鋭いなぁ、こいつ。

「やっぱり俺って成長してないしダメだなーって思ってただけだよ。相変わらず力もないし度胸もないってね」
「ふーん。オレは兄ちゃんがダメだなんて思ったことないけどね」
「それは身内補正ってやつだ。どうしても採点が甘くなるからな」
「そんなことないよ? 力は今でも十分強いと思うし。遺跡で陛下が殺されそうになったときも身代りになったんでしょ? そんなの度胸がないとできないよ」
「いやーあれはちょっと違うような……」

 遺跡で国王暗殺未遂事件があったときは、国王をかばうために体が動いた。
 怖いと思って躊躇することもなかった。
 けれども。今思えば、あれは俺が平和な日本育ちだったがゆえにできたことだ。拳銃で撃たれるということに、リアリティが全然なかったからだと思う。

 もう一回同じことができるかと言われれば、恐らくできない。
 あの痛さは一生忘れることはない。体に染みついてしまっている。次に同じシチュエーションがあっても、恐怖で体が動かない可能性が高い。竦んで見ているだけになるだろう。

「あ!」
「ん?」
「今『身内』って言ったよね。へへへ……身内だ」
「記憶にございません」
「……」

「ハイ終わり」
「えー、もう終わりなの」
「これ以上あなたを喜ばせたくないので終わりです」
「もー。ひどいなあ」

 腕をつかみ、カイルを無理矢理起こす。

「あ! お前ヨダレ垂らしただろ!」
「だって気持ちいいんだもん」



 ***



 療養期間中に、以前から城の担当者へ頼んでいた各調査のうち、まだ〆ていなかった『王立図書館での調査』についての報告をもらった。
 九年前に遺跡を発見したとされている、トヨシマと
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ