第四章
第33話 何者かの意志
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りバカにしてるだろ……。俺が所属している剣道サークルのメンバーはみんな、マッサージ、ストレッチ、ケガの応急処置、一通りできたぞ?」
カイルをうつ伏せで寝かせ、今度は俺が施術を開始する。
彼は子供なので、親指でおこなうと痛かったりくすぐったかったりするだろう。
手のひらや手根を使ってやっていく。
「ああああ……き、きもちぃ」
「そうか。よかったな」
東洋医学を勉強したわけではないので、経絡経穴について細かく知っているわけではない。
しかし、ずっと運動をやってきていたため、筋肉についてはそこそこ勉強した。
どの筋肉がどんな走行で存在していて、どんな役割をもっているか。だいたいは頭の中に入っている。
たぶん、そこらのリラクゼーション店の新人スタッフよりは知識がある……はず。
「はぁーきもちよすぎて眠くなる……」
「寝てもいいぞ。もう夜だしな」
「寝たらもったいないじゃん。意地でも起きてるもん」
「なんじゃそりゃ」
相変わらず、この金髪少年の思考回路はよくわからない。
「あ、そうだ。報告書を書いてたよね? 無事に出せたの?」
眠気を紛らわすためなのかしらないが、うつぶせのまま話しかけてくる。
「ああ、出したよ」
「どんな内容?」
「んー……。今回は歴史話が多いのかな。俺らの文明がなぜ崩壊したのかという話から、ヤハラや暗殺者が所属している『組織』の誕生に至るまでの、ヤハラから聞いた話をまとめた感じ。あとは『組織』の現状についても少しだけ聞けたので、それも」
報告書に書いた内容。それは、この国で教えている歴史の範囲には含まれていない時代――神話時代の話になる。
初めて読む人には、衝撃的な内容となるだろう。
あのとき、ヤハラとタケルの話を聞いたことで、『なぜ未来であるはずのこの日本が、自分の時代よりも文明レベルが下がっているのか』が判明した。
それが過去の世界に帰るための助けになるかは、正直わからない。
しかし、それは今までずっと気になっていたことだったので、少しスッキリした感じはある。
謎は多いよりも少ないほうがいい。
「へー。そうなんだ。オレも読みたいな」
「お前なら、陛下に言えば読ませてもらえるんじゃないか?」
「じゃあ、そうしよっと」
「歴史にも興味があるのか?」
「あんまりないよ」
「じゃあ何でだよ」
「陛下から、兄ちゃんの字が下手すぎて面白いって話を聞いたんで、それに興味が――」
「ぶん殴っていい?」
「試合するならいいよ」
「あー、やめとく」
一緒に訓練をしているとよくわかるが、この少年と俺では強さが違い過ぎる。
体術ではほぼ完封され、勝負にもならない。剣術でも、多少は勝負になるだけで、勝てる雰囲気までは
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