52話:裁判ごっこ
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し方ございません。腹案ですが、触れ回っていたご本人たちに責任を取ってもらいましょう。外聞が悪いので退学ではなく自主退学という事で対応いただければと思います。対象者はこちらにリストにしてございます」
検察官がファイルを2つ取り出し、一つずつ被告達に渡した。それぞれの一門と寄り子の子息の名前が記載されたものだ。この世代の子息は全員対象となっている。
「これは......。いささか対象者が多いのではないか?」
焦ると大声になる被告がとうとう小声になった。もう一方は両膝だけでなく右手も震えだしている。ただ、軍部の最高責任者として『はいそうですか』と許せる案件でもないのも確かだ。仮に彼らが任官した所で、配属先の兵士たちは指示に従わないだろう。なら在籍する事自体、無駄だ。ならこれはお互いにとって良い判断だろう。用意されたもう一つのセリフを言うタイミングが来たらしい。
「判断はここでお願いしたい。儂も軍部を抑えてきたが、信賞必罰は軍の拠りどころだ。この案が飲めないという事になると、軍部としてもう配慮はしなくて良いと通達せざる負えなくなる」
そう言ってため息をつきながら、首を横に振る。思ったわりに不本意ながら残念だという芝居が出来たのではないだろうか?もしかしたら俳優としての生き方もあったかなどと、世迷言を考えているうちに被告たちは判決を受け入れる判断をしたようだ。
「では、まもなく年末年始の休暇になりますので、そこで自主退学されるとい事で手配いたします。ご足労ありがとうございました。大きなご判断をされ、いささかお疲れでございましょう。我らはこれにて失礼いたしますゆえ、しばらくお休みください。尚書閣下、次の公務が控えております。参りましょう」
そう言うと検事役は席を立ち、儂に道をあける形で、応接セットのわきに移動した。応接室から出ると検事役もついてくる。もう判決は下された。法廷に残る意味もないだろう。それぞれの執務室へ戻る。まだ先の話だろうが、一応、儂の意向をちゃんと伝えておこう。伝聞では間違って伝わるやもしれぬからな。
「伯、この度の対応、見事だった。前進論の火消しといい、今回の件といい、伯爵には軍務省で良き思い出が無いやもしれんが、艦隊司令官の次の職務として軍務省次官も考えてもらえればありがたい。これは儂の本心だ」
伯爵は一瞬驚いたようだが、嬉しそうにありがとうございますとお礼を言って言葉を続けた。
「閣下、私は軍務省でのお役目を嫌な思い出だとは思っておりません。昔からしつけは得意でしたし、自身も学生時代には、彼らの横暴を見て義憤を感じておりました。追い出せるものなら追い出したいと考えた事もございましたので、長年の夢が一つかなった想いです。ありがとうございます」
いつものお手本のような敬礼を伯爵がしてくる
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