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戦国異伝供書
第十三話 青と赤と黒とその四

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「後ろにあの者がいてくれる、ならばな」
「何があろうとも」
「浅井殿が来て頂ける」
「だからこそですな」
「わしにとってこれだけ有り難いことはない、無論武田にも上杉にも負けぬ」
 この気持ちは強くあった。
 しかしだ、こうも言ったのだった。
「だが戦はどうなるかわからぬ」
「だからですな」
「万が一のことがあれば」
「その時は」
「そうじゃ、あ奴がいてくれるからな」
 それだけにというのだ。
「頼らせてもらう、そしてじゃ」
「何かあれば」
「その時は」
「小谷から出て頂き」
「戦ってもらいましょうぞ」
「そうしてもらう、そして何よりも竹千代じゃが」
 家康のことも話すのだった、彼にとって自身の家臣や兵達と共にもう一人頼むべき者だ。
「文が届いておるが」
「どういった文でしょうか」
「徳川殿の文は一体」
「馬鹿なことを書いておる」
 信長は憮然とした顔で述べた。
「実にな」
「と、いいますと」
「どういった文ですか」
「一体」
「何かあった時のことは妻子と家臣、そして民達のことを頼むとな」
 そう書かれてあったというのだ、文に。
「だから喜んで戦うとな」
「まさに死にに行く者の文ではないですか」
 そう聞いてだ、思わず眉を顰めさせたのは金森だった。
「それでは」
「そうじゃな」
「はい、その様なことでは」
「本当に死ぬわ」
「そうなりますな」
「相手は武田じゃ」
 この家だからだというのだ。
「それではじゃ」
「戦になれば」
「死ぬことがな」
「まことに有り得ますな」
「これは棄て置けぬ、飛騨者を送ることを決めてよかった」 
 信長は心から言った。
「それでじゃ」
「武田家が動けば」
「すぐにあの者達を送ってじゃ」
 飛騨者達をというのだ。
「そしてじゃ」
「すぐにですな」
「あの者達を送り」
「そして我等も」
「すぐにですな」
「三河に向かうぞ」
 家康の領国であるこの国にというのだ、家臣達にあらためて話した。
「そしてじゃ」
「武田家を退け」
「そうしてですな」
「当家も徳川家も護りますな」
「そうするが何時かはな」 
 こうも言ったのだった、家臣達に。
「武田家そして上杉家もな」
「降す」
「そうされますな」
「必ず」
「そうする、天下統一にはじゃ」
 まさにその為にはというのだ。
「両家はじゃ」
「必ずですな」
「降さねば天下統一はならぬ」
「左様ですな」
「あと毛利もじゃがな」
 信長は西国のこの家のことも忘れていなかった。
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