207部分:第十四話 ドイツの国の為にその七
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第十四話 ドイツの国の為にその七
「我が血族は。昔から狂気をはらんでいるのだから」
「それは違うと思います」
「違うというのですか」
「そうです、違います」
切実な、澱みのない声でだ。ホルニヒは話すのだった。
「陛下は。ヴィッテルスバッハはです」
「狂気を持ってはいないか」
「人は悲しいものです」
彼はだ。自然と思うままの言葉を出していく。
それは王への言葉だ。それを出していくのだった。
「己と違うもの、理解できないものを狂気とみなしてしまいます」
「では私は」
「そうです。狂気ではありません」
だからだというのである。
「だからこそ。私は」
「私を理解したいのか」
「確かに狂気はあります」
それがこの世に存在することを否定することはしなかった。これはホルニヒもわかっていた。狂気は確かに存在するのである。
しかしだ。王はだ。どうかというのだ。
「ですが陛下にもヴィッテルスバッハにもです」
「狂気はない」
「はい、ありません」
こう話すのだった。
「決してです」
「ならいいのだがな」
王は言うのだった。僅かに安堵した顔でだ。
「私が狂気の中になければ」
「狂気に陥っている方がです」
どうなのか。ホルニヒはそれも話す。
「今こうして戦いを悲しまれるでしょうか」
「戦いをか」
「陛下は戦いを悲しまれますね」
「血は好きではない」
実際にだ。そうだと述べる王だった。
「人が無駄に死ぬ。そしてそこには剥き出しの醜さがある」
「だからですね」
「そうだ、だからだ」
これがだ。王が戦いを嫌う理由だった。
それを話してだ。彼はさらに述べた。
「戦いは何も生み出さない。決してな」
「そうしたお考えがあるからです」
「私は狂気に陥ってはいないか」
「その通りです。ご安心下さい」
「わかった。ではそなたのその言葉」
穏やかな微笑みになってだ。王はホルニヒに話した。
「信じさせてもらう」
「そうして頂ければ何よりです」
「狂気だと思うのも駄目か」
王はふと言った。こうだ。
「気持ちが沈んでしまうばかりか」
「はい、それよりも」
「花を見るとするか」
王の考えが移った。そこにだ。
夜空を見る。そこにはだ。
花が咲いていた。今は白い花々が咲いている。それを見てだ。
彼はだ。その夜空の白い薔薇を見ながら。あらためてホルニヒに話した。
「次の花はだ」
「次はですか」
「青い花だ」
微笑んでだ。こう言うのだった。
「青い花が夜空に咲く」
「陛下は青がお好きですね」
「この世で最も好きな色だ」
微笑のまま話した言葉だった。
「それにバイエルンの色だからな」
「そうですね。確かに」
「バイエルンの青。ヴィッテルスバッ
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