205部分:第十四話 ドイツの国の為にその五
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第十四話 ドイツの国の為にその五
支配的になっていた。臣民達は呆れながら同じことを言うのだった。
「うちの王様ときたら」
「ここからが肝心なのにな」
「今ミュンヘンにいないんだろ?」
「そうらしいな」
ここでだ。王がミュンヘンにいないことがだ。話題になった。
「ベルツに行ったらしいな」
「ベルツ?あの保養地にか?」
「戦争がはじまったのにか」
「そうしたのか」
「何でだ?」
そのことにだ。誰もがいぶかしんだ。
「王様がいないとまずいだろ」
「戦争だぞ」
「この戦争はかなり派手だぞ」
「それで何考えてるんだ?」
「何でベルツなんかに」
「あの王様は何考えてるかわらないけれどな」
「それでも。今はな」
ないとだ。誰もが思うのだった。
しかしだ。実際に王はベルツに向かった。そしてだ。
その場所でだ。日々花火を見ていた。濃紫の夜空に赤や青、緑の大輪が咲き続ける。それを見つつ。王はこう呟くのだった。
「火薬は何の為にあるか」
「それは」
供をしているホルニヒがだ。ここで言った。
「何の為かといいますと」
「そなたもだろう」
王は彼が火薬についてどう考えているのか言ってみせた。
「火薬とは銃や大砲の為にあると思っているな」
「はい、確かに」
王に言われてはだ。彼も否定できなかった。まさにその通りであった。
「それはその通りです」
「そうだな。殆どの者がそうだ」
王は言った。
「そう思うものだ」
「しかしそれはというのですか」
「そうだ。火薬をそれに使って何にするのだ」
王の目が悲しいものになる。そのうえでの言葉だった。
「火薬は。こうして」
「花火として使うものですか」
「美に使わなくて何だというのだ」
また花火があがった。派手な音を立ててだ。夜空に花を見せている。王は別荘のバルコニーに席を出してそこに座って見ている。
ホルニヒはその傍らに立っている。そしてなのだった。
「火薬も。他のものも」
「ですが今は」
「わかっているのだ」
王はホルニヒの言葉に暗い顔になった。
「それはだ」
「では陛下、ここは」
「ミュンヘンに戻るべきだというのだな」
「はい、そうです」
彼は真剣な顔で王に述べた。
「そうしましょう」
「しかし」
「しかし?」
「それはしない」
ミュンヘンにはだ。戻らないというのだ。
そしてだ。王は彼にこう話した。
「むしろそうした方がいいのだ」
「ミュンヘンにいないことが」
「そうだ。ミュンヘンにいれば戦いを指揮せざるを得ない」
王はその国の軍の最高司令だ。名目上のことでしかないといってもだ。その指揮にあたるということ自体がだ。それが間違いだというのだ。
「それは避ける」
「どうしてもです
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